「許されぬ罪」コリーニ事件 Mahhy__*さんの映画レビュー(感想・評価)
許されぬ罪
圧巻でした。
恩人であり、被害者であるハンスの決して忘れてはならない、そして許されてはならない過去であるナチ時代。
ハンスは根っからの排外主義者でも、悪者でもないはずです。しかし報復として行ったイタリアでの虐殺の指示、そして幼いコリーニの目の前で父親を殺すというのは本当に、本当に残酷であり、許されることではありません。
この描写が明るみにする事実は、戦争で人は狂うということ。
非人道的なことをしておきながらコリーニの父を殺した銃をずっと処分できずに残しておいたわけですから、罪悪感に苛まれた戦後であったことは確かです。家族にも言わず、1人で記憶していたハンスの行為は残虐そのものでした。
いくら上からの命令の報復作戦だったとしても劇中で述べられた通り、ハンスは戦争犯罪者として裁かれるべきでした。
そしてその裁きはハンスに、そしてその家族にとっても必要だったはずです。
ハンスを無罪にしてしまうことは誰のことも救いませんでした。
コリーニに銃を頭に突きつけられ、「強くなる練習だ」と言われたハンスは一瞬にして過去に戻り、甘んじて殺されることを受け入れます。それしか彼にも選択肢はなかったはずです。
映画の構成に関しても、ただただ素晴らしいとしか言えません。
映画ですから、多少さっさとは進みますが、違和感を覚えるほどでもありませんし、何よりリアリティをもって観ることができました。
コリーニ、ハンス、ハンスの家族、法改正に飲まれた弁護士、全ての人々の葛藤と苦悩が伝わってきました。
過去に背を向けることは未来に盲目になること。ヴァイツゼッカーの有名な言葉です。
未来を明るくするためには、過去と対峙することが必要不可欠なのです。他国もやったから、自国も被害にあったから、と言って自国の罪から目を背けてはいけない。
日本はいつこの事実に気付けるのでしょうか。
序盤の暗く、重い映像から、徐々に明るさをもっていくのが印象的でした。コリーニの青い目が暗闇でも光り、そしてその目が最後に空を、上を見つめていることにも感動しました。
自死を選んだ彼ですが、判決をあえて出さなかったことには意味があると思います。
どのような判決になることが最善なのでしょうか?
無罪?減刑?終身刑?
自分は減刑だと思いましたが。
コリーニ自身も言っていたように、死者は報復を望まないでしょうから、ハンスを殺した事はやはりどうあがいても完全に正当化することは不可能です。
この事件は法改正を行ったこと、それを許したことに問題があるのですから。
現代で真の正義が机上の空論にならないことを祈るばかりです。