「分断されたアメリカ社会の実情が、痛いほど鮮明に描かれている」行き止まりの世界に生まれて tさんの映画レビュー(感想・評価)
分断されたアメリカ社会の実情が、痛いほど鮮明に描かれている
なぜこの人たちはこんなにも苦しんでいるのだろうか?
この映画を観ると考えてしまう。
この人たちは飢餓に苦しんでいるわけではない。
紛争に巻き込まれているわけではない。
差別に苦しんでいるわけではない。
客観的に見れば、この人たちが苦しんでいるというのは、誠に不思議なことだ。
ギャップが鮮明に描かれる。
作品の序盤は、少年たちの屈託のない笑顔が印象的。
中盤以降は、現実が重くのしかかってくる。
タイトルにある通り、楽しそうな時とのギャップが凄いんだよね。
少年たちは友達としては繋がっているのにも関わらず、何かが分断されている。
この分断の感覚はなんなんだろう。
誤解しないでいただきたいのは、黒人と白人が分断されているという、そんな軽々しい話ではない。
この映画で描かれている分断は、そういった分断ではなくて、もっと身近で実生活の中にある分断である。
彼らはなぜ連帯できないのだろうか?
映画パラサイトが示したように、下流が下流同士で殺し合っていては何も解決しない。
繋がりのない状態では、人間というものは恐ろしく脆弱な存在であることを示唆している映画だと思う。
テクノロジーと資本主義がもたらした最大の罪は、人々が連帯できない状況を作ってしまったことなのかもしれない。
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