「興奮と混乱が一気に押し寄せた」TENET テネット 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
興奮と混乱が一気に押し寄せた
興奮と混乱が一気に押し寄せた。私はまだ多くを理解できていないし、理解という呪縛から解き放たれてもいない。ただ、こんな映画は初めて。それだけは断言できる。長らく時間との格闘を続けてきたノーランだが、さながら本作は「007」に時間の概念を掛け合わせた怪作と呼ぶべきか。主人公、宿敵、ファムファタール、マクガフィンと全ての立ち位置は明確なのに、この映画は決して線形に進まない。そこが厄介だ。そもそも我々にとって「時間軸」とは、ストーリーから振り落とされないための安全ベルトのようなもの。この固定観念のネジをちょっと緩めただけで、こんなに慌てふためく自分がいる。来るべき新時代の映画はかくも容赦なく進化していくのだろうか。その意味で本作は革命であり、パンドラの箱。少なくとも、たった一度見ただけではスタート地点に立ったに過ぎない。真の冒険は、起こるべきことを把握した上での、二度目以降に始まるのかもしれない。
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