「狂気の鞘となりたい…」るろうに剣心 最終章 The Beginning bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
狂気の鞘となりたい…
『るろうにシリーズ』の2部作完結編となる第2弾『The Beginning』。緋村剣心が、人斬り抜刀斎ととして呼ばれ、恐れられるようになった過去に遡り、不殺の誓いを立てて刀を置く場面までを描いている。
新たな時代の幕開けを願い、倒幕を志す歴史に名を遺した桂小五郎や高杉晋作の猟犬として、徳川に味方する者を殺め続けた剣心。その心の葛藤を映すかのように、暗い靄がかかったような、重苦しさが終始作品の中から伝わってきた。前半部分は、架空の人物の緋村剣心が、実在したかのような、NHK大河ドラマを観ているようでもあった。
また、これまで同様、アクションは、日本の時代劇に脈々と受け継がれるの殺陣の技と新たな映像技術を融合させた、大変クオリティーの高い映像を見せつけ、時代劇エンターテイメント作品として楽しませてくれた。これはハリウッドには決して真似できない、日本ならではのエンターテイメント性だと思うし、佐藤健は、三船敏郎・真田広之・渡辺謙に次ぐ、世界で活躍する「侍」となって欲しい。
そして、今回はこうしたアクションの素晴らしさ以上に、これまでのシリーズには無かった、心に染み入るヒューマン・ドラマとしての色合いが濃くなっている。それが、剣心と巴の悲運のラブ・ストーリーである。
前作で明らかになっていたように、剣心が命を懸けて守りたいと思った巴は、実は剣心が殺めた侍の妻となるはずだった女。その巴の、可憐さの中に哀愁を漂わせ、次第に、仇のはずの剣心の心の隙間を埋めようと『狂気の鞘』となっていく女、巴を有村架純が見事に演じている。
最近ハリウッドでも、『鬼滅の刃』が大ヒットしているようだが、この作品こそ、世界に誇れる日本映画として、世界に進出して欲しいと願うばかりだ。