「もう一度見たくなる映画」Our Friend アワー・フレンド shironさんの映画レビュー(感想・評価)
もう一度見たくなる映画
時系列が前後して描かれます。
癌の告知日を始点として「告知から13年前」「告知から1年後」「告知の4年前」など。
ランダムに描かれるエピソードはミステリ仕立てのようで、徐々に空白だったピースが埋められていき…
前半と後半で、それぞれの関係性の見え方が全く変わってくる映画でした。
「親友」の定義を考えるとき、いつも思い出すコメントがあります。
有名人たちに「親友とは?」とインタビューした映像を繋いだテレビ番組で、安部譲ニが「そいつの為に命をかけられる相手」と答えていました。
その時はいかにも仁義の世界に身を置いていた人の言葉だなぁ。と感じましたが、
他の人たちが軒並み「困った時に助けてくれる」「秘密を相談できる」など、自分に対する相手について語っているのに対して、安部譲ニは相手に対する自分を語っていることに気づきました。
この映画は、仕事や恋人より友情を優先させた男の物語だと思っていたので、安部譲ニがよぎったのでしょうね。
自己犠牲で相手を助ける、尊い友情の物語なんだと思っていたので。
ところが!埋まっていくピースのなかで、それだけではなかったことが描かれます。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、自己犠牲ではなく、恩返し。
お互いがお互いの救いになっている、一方通行ではない関係が描かれていました。
ジェイソン・シーゲル演じるデインは、その年代ごとに精神状態が異なることがわかり、全く別人のよう。
ニコルがとにかくキュート。
交友関係が広く、みんなを惹きつける魅力があって、相手を認めて受け入れてることのできる女性。
悲劇のヒロインを支える二人の男…と思っていましたが、ここにも決して平坦では無い夫婦関係があって、やはり友の存在が救いとなる。
一貫してお互いがお互いの救いになる事を描いている映画でした。
小さい妹と姉との、受け止め方の違いも丁寧に描かれていました。
ちょうど思春期に差し掛かっている姉は父親に対する当たりが強く…てっきり父親に対する反抗期だと見えていた態度は、実はそれだけでは無かったことが途中でわかったり
ヤングケアラー問題も。
後半でデインが子供達の世話を通して見ていた景色を、父親であるマットがなぞるシーンがあるのですが
手が離れた子供ほど目をかけなくてはならない。
子供のちょっとした変化を見る余裕が感じられる、素敵なシーンでした。
終末医療についてもいろいろと考えさせられました。
末期癌の緩和ケアについて、訪問看護や看取り士さんなど、家族以外の介入に救われることも多い。
トップシーンの浜辺が、まさかこんなシーンだったとは。
最初から見直したくなる映画でした。