劇場公開日 2020年8月28日

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「民主主義のお手本の国でトップが平然と嘘をつき戦争しようとする時、あなたならどうする?」オフィシャル・シークレット 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0民主主義のお手本の国でトップが平然と嘘をつき戦争しようとする時、あなたならどうする?

2020年8月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

「9.11」という数字の意味を知らない人はいないのですが、「9.11」のすぐ後にアメリカとイギリスが起こした「大量殺害」の話は、すっかり忘れ去られている気がします。
「9.11」が起こった後のアメリカのブッシュ大統領は、突然「悪の枢軸」と言い出し、イラクが核爆弾などの「大量破壊兵器」を持っている、と言い放ち、「9.11」の黒幕は(石油大国の)イラクのフセイン大統領だと決めつけました。
日本も賛同した「イラク戦争」は、すでに証明されているように、実はアメリカ政府が「でっち上げた嘘」に因るものだったのです。
本作は、イギリスの諜報機関に勤務する女性職員が、無理やり戦争をしようとするイギリス政府に「おかしい!」と感じ、マスコミにリークする実話を描いています。
同じテーマの作品としては、昨年に公開された「記者たち 衝撃と畏怖の真実」や「バイス」がありますが、これらはアメリカ視点で描かれているのに対して、本作は、イギリス視点で描かれている新しさがあります。
キーラ・ナイトレイの演技が良く、しかも、彼女の扮する「諜報機関職員」が主役のため裁判も関係するなど、物語としても、昨年のアメリカ視点の2作とは違った展開をしていきます。
「イラク戦争」での死者は、本作では「イラク人が15万~100万人、アメリカとイギリス軍は4600人以上」とされています。
いずれにしても、2000年代の、これだけ情報が行き交う社会で、100%の嘘で、平然と民主主義代表のような国が数万人以上もの人を殺してしまうわけです。
歴史に「もしも」は、ないのですが、「過去」(と言っても、まだ10数年前の話ですが…)からの教訓によって「未来」を変えることはできると思います。
その意味で、本作の役割は非常に大切なものだと感じます。

細野真宏