「恐ろしくて悪魔的だが、魅せる。」ロード・オブ・カオス 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
恐ろしくて悪魔的だが、魅せる。
恐ろしく邪悪な作品だ。危険で痛くて悪魔的。R-18指定なので、事前にどのような描写が含まれるのか確かめてからご鑑賞されることをお勧めする。とはいえ、ノルウェーにおける90年代ブラックメタルの勃興期に起こったこの事件は、音楽ファンでなくとも多少は知るところのもの。事実をもとにしている強度や語り口の巧さゆえか、何度も顔を背けはしても、ことの顛末を見届けたいという思いだけは確実に高まっていく。登場人物は皆ぶっ飛んでいて、観客にとって共感可能な何かを秘めているわけでもない。ただ、主演のローリー・カルキンだけは別。時に常軌を逸しつつも、どこか透明感があり、暴走の中に怖れがあり、ふとした瞬間に夢から醒めたような瞳をする。そんな心の咆哮に寄り添いつつ、映画は徐々に彼を突き放して闇を深めていく。その熱さと冷たさの波状攻撃。悪魔的な情熱というある種のシュールさ。止められない狂気。強烈だが見応えはある作品だ。
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