「史上初、女性監督がデンマークのアカデミー賞で作品賞受賞! 刺さる人には刺さる作品」罪と女王 細野真宏さんの映画レビュー(感想・評価)
史上初、女性監督がデンマークのアカデミー賞で作品賞受賞! 刺さる人には刺さる作品
新型コロナウイルスの影響で1ヶ月公開が遅れていましたが無事に日本でも公開されるようです。
本作は、デンマークのアカデミー賞(ロバート賞)で作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演男優賞など主要9部門受賞した、まさに2019年のデンマークの代表作です!
しかも、私が毎年注目しているアメリカのサンダンス映画祭で「観客賞」を受賞しているので、これは見ないと後悔しそうだと見てみました。
まず、本作は、題材が選ばれた視点から興味深いのです。
監督が「家族の秘密はどのように生まれるのか?」という視点から「家族の秘密が出来る様子を映画化しよう」と考えたそうです。
そして、選んだのが「性交渉のスキャンダル」。
「性交渉のスキャンダル」において「年上の男性と若い女性の関係」と「年上の女性と若い男性の関係」では、人々は圧倒的に後者の方を「ロマンチック」に捉える傾向がある、と分析しています。
言われてみれば、確かに日本においても、後者の方はセンセーショナルに取り扱われますよね。
そこで、生徒と性交渉を持った女性教師に関する記事をリサーチしながら、本作は形作られていったようです。
本作では、気の強い女性弁護士の一家に、夫の、元の奥さんの子供(青年)がやってきます。
最初は心を閉ざしていた青年が、「ある事」をきっかけに少しずつ心を開いていくのですが、その「ある事」にしても、あまり見たことの無い展開でした。
主人公の女性が頭脳明晰な弁護士、という設定も上手いですね。
そして、物語は想像できない方向に進んでいきます。
なるほど、ここまでしっかりとした作品であれば「2019年のデンマークの顔」となったことにも納得がいきます。
ただ、ストーリーは決して単調ではないですが、ハリウッド作品のように物凄く凹凸を付けて描かれているわけでもないので、刺さらない人もいるでしょう。
なお、モザイクの入るシーンでは、監督が「#Me Too」運動を過度に意識し、男性の俳優に相当に配慮した撮影がなされたそうです。ここら辺のエピソードは、女性監督ならでは、ですね。
本作は、あまり見かけない題材な上に、様々な判断を観客に投げかける良質な作品でした。「共感」「不快」「好奇心」など、どの感情でもいいので、一度は見てみてもいいのではと思います。