轟音のレビュー・感想・評価
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落ち着いていて、自然で、観やすい
福井県の田舎でも都会でもない町で暮らす人々の、着飾らない生々しいリアルを描いた作品に感じました。
商業映画にありがちな大袈裟な演技や演出、ご都合主義的なシナリオがなく、まるでドキュメンタリーを観ているようでした。
裏を返せば、映画としては淡白で締まりがないとも言えるけれど、自分はこういう方が好き。
全然ハッピーな映画ではないし痛々しい話なんだけど、自然な演技が相まって、生きていく人々の温かさを感じる。
エンディングの歌も良かったです。
息もできない
ヤン・イクチュン監督の低予算韓国映画「息もできない」を彷彿とさせるような作品でした。
淡々としたテンポでセリフもB GMも極端に少ないため、観る側にもストイックさが要求されます。内容的に暴力的なシーンが多いですが、ちゃんと「痛そう」に見えるのがポイント高いです。
ただ録音があまりにも悪く整音でも救いきれないほどのノイズが乗っている箇所があったのがマイナスです。インディーズなのである程度は仕方ないのかもしれませんが、商業公開されている作品でここまで悪いのは致命的です。
悲劇だが、完全な悲劇ではない。そこに希望があるってことなのか。
あまりネタバレは書きたくないたちなのであれだが、映画全体は暗いし、重い。
でも、それは内容だけではなく、登場人物の佇まいもそうさせている。
とにかく俳優が良い。
いや、良いという表現も間違ってるかもしれない。
そこにいる人にしか見えない。
数人の人生を少しずつ垣間見ていく。
少なめのセリフ(監督は、普段生活しててあまり喋らないじゃないですかとだからセリフが必然的に少なくなるんですと。なるほどと思いました)の中に営みが見える。
背景を感じる。
途中まで観て、あーそういうことかと、背景を感じながら、人と人との距離感(精神的)にヒリヒリやドキドキしながら、あっという間の99分でした。
見ごたえ十分、最後まで重たい話ではあるが、後味が悪くないという謎。
そして、映画観たなぁって感じ。
韓国ノワールとか好きな人は特におすすめかも。
ラストシーンが凄いというかそうとうかき乱されるし、のめり込まされる、訳が分からんのが、なんの感情か説明できない感情が沸き上がり、泣く、という初体験をしました。
頭ではなく、心で感じる映画なのかもしれませんね。
ドライで逆剃りは痛い
兄貴が何らかの犯罪を犯して逮捕され、それを苦に親父が自殺した家庭の弟である主人公が家を飛び出し彷徨う話。
母親と二人で訪れた福井地裁からの帰り道、兄が捕まったことで自分に及ぼす悪影響を不安がる主人公に自分で考えろと返す母。自宅に帰ると親父は首を吊っており母親は茫然自失。
主人公は家を飛び出しボコボコにされる為に、見ず知らずのイキッたおっさんにケンカを売るが、腕っぷしの強い浮浪者に助けられてしまい、勝手に後をついて行きストーリーが巻き起こっていく。
先のことを何一つ母親と話すでもなく飛び出して、ただの衝動だけという感じの割に長いこと口をきかない浮浪者と一緒にいるし、浮浪者も何がしたいんだか良く判らない。
そもそも、主人公の年齢や現在何をしているのかが良く判らないけど、高校生?金持ってなかったし。結構そこ大事だと思うんだけど。
浮浪者も雇い主も裏仕事している割に脇が激甘だし。
更には、まあ最後には絡むんだろうなとは思ったし、一応絡んだけど、半分は地方FMか何かのパーソナリティの恋愛話という…。
このパーソナリティサイドも含めて、登場人物達がことごとくまともに会話出来ないズレた人間ばかりで最後の展開になる訳だけど、この作品に恋愛話の必要性を感じない。
その前に何が有るわけでもないのに長く考えに耽るシーンがいくつか挟まれてチンプンカンプンな間があるのも良く判らなかったし。
主人公にしても最初の一晩以降、ラストの展開までは序盤の感情をおくびにも出さないし、詰め込み過ぎたのかブレたのか、何が言いたいのか良く判らず、雰囲気だけになっちゃった感じかな。
ある種の台湾映画のようだった
自分は台湾映画ニューシネマの時代の映画が好きですが、それと似たような感覚があった。
自然的な演技や、空間の切り取り方。あまり会話しない役者たち。
決してわかりやすい表現をしている映画ではないけど、一つ一つの芝居を通して、受け取れるものが多く、見ている人によって物語がかわってくるような作品と思える。
芝居を見る映画
この映画は物語のためのキャラクターを俳優が演じているというよりかは、そこにいた人を切り取ったに近い感覚の芝居の力量でした。芝居の一つ一つの動きを感じるには劇場で見るのが一番良いですね。言語化しづらい感覚を映画を通じて受け取りました。それを自分で考えるのがまた楽しいですね。 映画も消費される回転が早いことが当たり前に時代に、すぐに消化されないこの映画はとても好き。
人を丁寧に描いている
舞台挨拶で監督が仰っていた、生まれ育った福井の舞台での鬱屈とした嫌な子供時代。
大人になって見えた街は、そこに暮らす懸命に生きている人の魅力が詰まってる。
それを描きたかったと言われた通り、それでも生きていく人間の弱さ、強さが映し出されていました。
素敵でした。
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