「主張が激しすぎ」映画 えんとつ町のプペル さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)
主張が激しすぎ
描きたい事は充分なくらい伝わります。
でも、色々とモヤモヤする部分も。
総じて普通です。
絵本作家としても活動しているキングコング西野の絵本をStudio4℃によってアニメ化されたアニメーション映画。
アニメーション自体は綺麗です。
マインド・ゲームや海獣の子供を手掛けただけあって作画の緻密さやクオリティは非常に高いです。
えんとつ街の情景も個人的には結構好きです。
キャラクターの声優では、ごみ人間のプペルを演じた窪田正孝とルビッチの母親を演じた小池栄子が良かったです。
どちらも役に非常にはまっており、EDクレジット観るまで誰が演じているか全く解りませんでした。
音楽も好きです。
劇中で流れる秋山黄色の曲も良かったし、エンディングに流れる曲はファンタジックな映画の世界観に非常に合っていたと思います。
また、ストーリーに関してはルビッチとブルーノによる親子間の絆が劇中から凄く伝わって、本作において感動出来た所の一つです。
そして、「夢を見ることを笑うな!」という強いメッセージ性も全編にわたって伝わってきました。
ただこの映画、色々と詰め込み過ぎたのが最大の問題点である気がします。
まず、えんとつ街は数多くのえんとつから出る煙で空が覆われておりそれによって外の世界が見えなくなっているという設定。
外の世界を隠すための煙ではありますが、最初は風が少ない場所であるから煙が飛ばされないで済むと思っていたのですが、終盤で空を飛んでいる時は煙の雲が嵐で強風になっています。
恐らく、「夢を追っている時は嵐のように波乱がある」という意味で入れたのかもしれませんが、結局それを入れたことによって街の世界観におけるリアリティに欠けてしまいました。
また、プペルとルビッチが友達になる下りがだいぶ駆け足な気がします。
プペルのせいでルビッチは散々な目に合ってるのに、まだプペルとの絆を感じさせる場面が少ないのに「僕の友達になって!」とプペルに言うので、だいぶ描き方が浅いです。
あと、ルビッチはそもそも何故「空には星がある!」と狂信的に良い続けていたのでしょうか?
お父さんが星があると言ってただけなので、正直それだけで「星がある」と信じているのは少し危険な子にも思えます。
「星がある」と言うのであれば、もう少し根拠や証拠を見付ける下りも描いてほしかったです。
また、この映画は説明が多すぎます。
えんとつ街の秘密等を全編にわたって解き明かすような展開になっていくのかと思いきや、えんとつ街の正体や秘密はキャラクターの説明で殆ど明かされてしまうし、描きたいテーマもかなりキャラクターの説明で描かれていました。
説明を多く入れすぎてしまった事によって、キャラクターの会話や台詞にあまりリアリティが無いし、どこかキャラクター機械的で不自然です。
描きたいテーマ自体は良いと思います。
ですが、それをしつこい程に映画に詰め込んでしまった事によってだいぶ説教臭く感じてします。
映画の全体的な評価は高めですが、個人的には色々な所でモヤっとしてしまったのであまり好きになれませんでした。