「宝石箱のような映画。」映画 えんとつ町のプペル 風のビリーさんの映画レビュー(感想・評価)
宝石箱のような映画。
この映画は絵本というよりは「漫画」であり、アニメ映画というよりは「アニメ的なテレビゲーム」という印象だ。
それは見てもらえば納得すると思うが、私が一番驚いたのは「笑い」の部分である。 今はお笑い芸人がメガホンを取るのは当たり前になっているが、その多くは自身の笑いが強く出てしまっている。 それは悪いことではないが、その個性的な「ギャグ」によって作品の世界観が一瞬で変わってしまうこともあるのだ。
しかし「えんとつ町のプペル」には、それが全くない。 大笑いするほどではないが至る所に「小さな笑い」がちりばめられていて、それはまるで疲れたときに食べるチョコレートのような甘い快楽を脳に与えてくれる。派手なアクションや少しダレてきた後にコレがあると、またすぐに作品には入り込むことができるので欠かせない。
この作品に一番合う「笑い」は、決してメインディッシュにはならない。しかしそれは優秀な声優陣やクリエイターによって、派手さはないが全く見窄らしくもないオードブルになっているのだ。
また、映画「えんとつ町のプペル」にはアニメの持つ普遍的な美しさある。それは描いた絵が動き出すという魔法と登場人物たちの信念が、観ている者たちにとって「鏡」となるからだ。この作品は、まさに今の自分を映す鏡なのだ。
ただ楽しむというだけでは終わらない、新しい自分に気付かせてくれる良質な映画である。
ただし、それは巨大なスクリーンに「西野亮廣」という男の顔がちらついてしまうのなら大問題だ(笑)
これから鑑賞予定の方は、まずは「絵本」が原作であることと「西野亮廣」という人間が描いたものであることは忘れて観ることを勧める。
そうでなければ、このアニメ映画史に新たに現れた名作の素晴らしさを見逃してしまうだろう(笑)