スパロークリーク 野良犬たちの長い夜のレビュー・感想・評価
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銃社会の病巣
ミシガンの民兵組織の内輪もめを延々描く犯罪心理描写映画に思えました。一応、実行犯は誰かとサスペンス調に進むので見続けてしまいましたが邦題の野良犬たちの長い夜とは言い得て妙ですね。
民兵(Militia)と言われてもピンときませんが法的に私的交戦権は認められていないにも関わらず銃を持つことは合衆国憲法修正第二条で認められた権利として武装する集団がいることも事実です。アメリカでは自称も含めて576の極端な反政府グループがあるようです。
本作のプロットは2010年のミシガン州で実際にあった警察襲撃事件を基にしているようです、犯行を計画したのはHutaree というミシガン州エイドリアン近郊に拠点を置く、キリスト教愛国者運動のイデオロギーに固執する民兵運動グループでした。ミシガン州では2020年にも州知事の誘拐未遂事件がありFBIによって9人の民兵が逮捕されました。ホイットマー州知事は彼らは民兵でなくただのテロリストと言っています。トランプ氏の台頭が極右勢力を勢いづけたこともあるでしょう。昨年、ミシガンの高校で15歳の少年の銃乱射事件が起きましたが、なんと銃は両親がクリスマスプレゼントに贈ったものだそう、まさに銃社会の病巣の深さが伺い知れます。
劇中でも似たような過去を持つ青年(ロバート・アラマヨ)が出てきましたね。
民兵になった動機の掘り下げなどは日本人の私にはしっくり来ませんでしたが、現実の銃社会の当事者の米国人には関心が高かっただろうことは想像に難くありません・・。
民兵?
という概念がそもそも日本にいるとピンと来ないんだけど、密室で誰が犯人なのか、この後の展開をワクワクしながら見た。あまりにも真っ暗シーンが多過ぎて分からず、結局弟が犯行をでっち上げ、今後犯罪を起こす恐れがある民兵組織を事前に摘発したと言うこと。兄貴はどーするのだろう。期待していた展開だっただけに肩透かしだった。
そんなアホな?
遠くでマシンガンの音、主人公の元警官ギャノンが、警察無線とつけると
.......guns fired.
Multiple officers down. Wiloock Road.
Immediate assistance.
I repeat.
multiple officers down.
Heavy armed gunmen opened fire.... マシンガンの銃声が続く…
片田舎の倉庫に集まった民兵組織の男たち7人。その中の一人がM-16自動小銃と手りゅう弾を倉庫から盗み、警官を数名殺害し倉庫に戻ってきている。ソリッドシチュエーション特有の心理戦映画の幕開けとなる。
意味が分からないところが散見する映画と言えて、何故リーダー格のフォードから犯人捜しの尋問をギャノンが任されたのか? またキーティングの自白を導くために彼自らリボルバーで頭を打ちぬくような身代わり行為を何故したのか?皆目と言っていいほど理解に苦しむ映画と言える。聡明な方なら、一見してわかるかもしれないが.....。
最後はとってつけたようなラストの終わり方で、女性は最後に婦人警官の顔出しがあるくらいで、ほとんど登場しない骨太な映画に見えるが、そんなことは全然感じない、ある意味、監督やシナリオライターの人をだまして喜ぶ姿が目に見えるもので、寡聞な天邪鬼なものとすればこのような評価となってしまい、映画を楽しめないものとなっている。
ただ別の人からすれば、サスペンス色が色濃く出ているので、いつ終わるとなく続く尋問の様子を楽しめるかもしれない。
シナリオは、いうなればラストありきの伏線をつなげた映画と言える。
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