劇場公開日 2021年12月17日

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「「永遠の化学物質」とそれを製造する企業の実態に慄然とさせられる一作。」ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「永遠の化学物質」とそれを製造する企業の実態に慄然とさせられる一作。

2022年1月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

作品の面白さとは別に、本作が明らかにした問題の大きさに唖然とさせられます。

本作の主人公、ロブ・ビロット(マーク・ラファロ)は、大手のデュポン社を告発する住民の側に立つ弁護士なのですが、彼が所属する弁護士事務所は、本来むしろ企業側の弁護を業務としているため、ビロットの動きは弁護士事務所、そして彼と彼自身の家族を追い込んでいきます。

身体の不調を押しつつ着々と資料と証拠を積み上げて戦い続けるビロットの姿には胸打たれるものがありますが、デュポン側は担当弁護士以外の姿が余り見えてこず、描写がやや一面的になりがちな感は否めません。このあたりは、本作の製作にも携わっているマーク・ラファロの思い入れの強さゆえでしょうか。『MINAMATA』(2021)では、國村隼の見事な演技によって、冷酷非情に思えたチッソ経営陣の心情まで描いていたこととはこの点で対照的でした(『MINAMATA』の方には、原告側の描き方についてまた別の問題があるんだけど)。

画面は終始彩度が低い寒色系の色彩が支配しており、まるで水だけでなく世界全体が汚染されているかのような印象を与えます。本作が取り上げるPFOAはもちろん現在では世界各地で製造・使用が中止となっていますが、一度作り出されたものは決してなくならならず、「永遠の化学物質」とも呼ばれています。そしてそのような物質はPFOAだけでなく多くの種類があり、その中には今も規制がかかっていないものも(この「規制」の有無をデュポン社は利用していた)。「ダーク・ウォーター”ズ”」と複数形になっているのはそんな意味もあるんでしょうか…。

yui