ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語のレビュー・感想・評価
全64件中、61~64件目を表示
久々に映画館で色々な感情が湧いてきた作品
LITTLE WOMEN
彼女の人生の物語が「動き始める」オープニングから、幸福な蜜月と辛い現実の切ないリンケージ、その二つが絶妙にまじりあって収まるところに収まっても再び「動き始める」ラストの本が出来上がっていくシーンは美しかった。シアーシャローナン、エマワトソンなど若手女優を使いつつローラダーンやメリルストリープで脇を固めていてキャストがすべてはまっていた。感傷的なムードは抑えつつ、前作レディバードでもそうだったのですがシアーシャローナンを凄く美しく演じ切っていました。グレタガーウィグ作品をリアルタイムで追えることの嬉しさを噛み締めています。これからシアーシャローナンに注目です。
映画館へ行くことにまだ二の足を踏んでいらっしゃる方へも、この映画だけはお勧めしたい。
映画館で観れて本当に良かった❗️
心からそう思える作品でした。
すべてが可能な限り丁寧に描かれているのですが、そのすべてが冗長さに陥る一歩手前までで、次の展開に移るのです。極めて技巧的なのに、極めて自然な流れの中で、我々はすべての登場人物の心に触れた気になれます。
例えば、お隣の富豪のお祖父さんは、重要な役割を果たす人ではあるのですが、あくまでも脇役です。なのに、鑑賞後も主要人物たちとそんなに変わらない強さで印象に残っているのです。この人のベスへの思いを想像するだけでも、泣けてきます。
主役級の大物女優エマ・ワトソンもまったく違和感なく引き立て役を演じています。それでも主役を食わない程度には存在感があって、でも、決してそれ以上ではない絶妙さ。
個人的に一番ツボだったのは、ラスト数分の本が出来上がっていく工程の描写。
思うようにならないことばかりでも、ひとつひとつ積み重ねていくことで、なにがしかの形が出来ていく。
ページの切れ端のギザギザの切断面を揃えていくのも、糸で綴り込んで製冊していくのも、そのすべてが色々な人生が交錯していく様と見事にリンクしていました。それを見届けるかのようなシアーシャ・ローナンの表情は、誰がなんと言おうと、映画館のスクリーンで見るべきだと私は断言します。
【追記】
昨今のアメリカやヨーロッパにおける黒人差別への抗議活動のニュースなどを見聞きしている中で、この映画を見ると、ちょっと綺麗事過ぎるとか、限定的な階級に属する人たちの世界の話として、消化し切れないという受け止め方もあるような気もしたのですが、ローラ・ダーン演じる母親のように、宗教への敬虔さが深い慈愛に繋がることも理解できるわけで、そういうことを知ることができた、ということにも十分意味があると私は思いました。
【女性が幸せになる道は、裕福な男との結婚だけではない。信念を持つ美しき若草達が成長していく姿に魅入られる。小説家を目指すジョーがグレタ・ガーウィグ監督の姿とダブって見えた、多幸感溢れる作品でもある。】
ー米、南北戦争時代を背景に個性溢れる4姉妹の成長する姿が素晴らしい。-
■今作品が素晴らしいのは、
・4姉妹一人ひとりの気質が丁寧に描かれている所と若き俳優さん達の溌溂とした演技である。
・そして、キャスティングの妙。
途中から、役名=実名で美しき彼女たちの姿を見ていたほどである。
・彼女たちが様々な軋轢、恋に悩みながらも、一人の誇りある人間として成長していく姿を南北戦争を背景に、少女時代と7年後を重層的に描くところも素晴らしい。
■印象的なシーン
・長女:メグ(エマ・ワトソン:安定の演技である。)
家庭教師のジョンと出会い、結婚した7年後、お金に不自由する姿。ジョンが”僕は甲斐性無しの旦那だね・・”と寂しそうに呟く姿を遣る瀬無い想いで見つめるメグ。
ーこの作品が、決して”ハッピー”だけを描いているのではなく、成長する過程で、苦い経験や、若き日の選択を後悔する場面も描いている事が良く分かる。ー
・次女:ジョー(シアーシャ・ローニャン:最早、素晴らしき女優の域に達している。)
冒頭、出版社に原稿を持ち込んだ際の、編集者との遣り取り。そして、7年後、”若草物語”を持ちこんだ際の、自信溢れる言葉の数々と署名のアップ。
-彼女も”ある選択”を後悔するのだが、家族(特にローラ・ダーンが演じた母)の支えで乗り越え、幸せを掴む場面(お相手は"ルイ・ガレル"じゃないか!)と、ローリーへの想いを吹っ切り徹夜で”若草物語”書き上げるシーンはこの作品の白眉のシーンの一つであろう。-
・三女:ベス(エリザ・スカレン)
ピアノが好きな、控えめな女性。その性格から皆から愛される。隣人の資産家ローレンス(クリス・クーパー)からは特に愛され、ピアノを贈られる。
-地味な存在として描かれるが、彼女が奔放な次女と4女の梯となっているのは観れば分かる。心中で勝手に”聖母”と命名する。-
・四女:エイミー(フローレンス・ピュー:近年の2作で、一気にスターに・・。)絵を書くのが好きで勝ち気、ちょっと意地悪な所もある魅力的なお転婆娘。
ー彼女が、ローレンスの息子ローリー(ティモシー・シャラメ)への想いを”好きな人の二番目は嫌なの!”と言い、去るシーン。辛いよなあ・・。でも、その言葉を言えるのは立派だなあ。-
・母(ローラ・ダーン)の博愛精神に満ちたクリスマスの朝の行動。それを見ていたローリーの計らい。
ー地味だが、”この母にしてこの娘たちあり”が分かるシーン。資産家ローレンス家の人々の気質も分かる。-
・昔気質の叔母(メリル・ストリープ)の姿。旧弊を象徴する人物として描かれるが、存在自体が、”インパクト大”である。
・南北戦争時の時代の移ろいの描き方。
序盤は”ホワイティ”だが、後半では”自由黒人”と思われる人々が描かれている。
<グレタ・ガーウィグ監督が、芸術と恋を両立させようとする稀有な女性を、自らとダブらせて描いたと思ってしまった作品。
当時の意匠、衣装も素晴らしく、人間性肯定の姿勢で描いた内容も実に爽やかな、多幸感溢れる作品でもある。>
現代風にアレンジされとても見やすい
若草物語との初めての出会いは小学生の時にアニメで見た記憶。そこから何度かいろんな形で目にした事があるが、その時その時で印象や感想が微妙に変わり楽しめる。今作も原作でいう2章にあたる部分を執筆中のジョーと4姉妹が大人になり幸せだった時期の回顧シーン繰り返しながらストーリーは進んでいく。
全てを2時間でまとめて描いてる訳ではないため、彼女らの心情描写などが丁寧に描かれていて非常に感情移入しやすく見易さがある。
個人的には1時間くらい過ぎたあたりで若干中だるみは感じてしまったが、後半のテンポの良さは引きつけられた。
人生は辛い事もあればその分幸せな事もある。ありきたりなこの言葉で僕は辛い時は乗り越えてきてるわけだが、この作品を見てると改めて感じさせてくれる。
そして同時に、人は生きていくうちに考え方や価値観は時間と共に変わっていき、より現実的な幸せを選択できるようになり、それが決して悪い事ではない事を改めて実感させてくれる。僕自身年齢的にも色々と考え方や価値観が変わりつつある真っ只中なだけに自己投影しながら楽しみながら観ていたりもしていた。
この作品のジョー達の人生はまだまだこれから先も長く、この後も良くも悪くも波が原作では待っている。
この世界のジョー達のこの後もまた描いて欲しいと最後に思いながら映画館を後にした。
全64件中、61~64件目を表示