「私たちの若草物語」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
私たちの若草物語
Wikipediaによると、『若草物語』の映画化は実に今回で7度目。
他にもTVドラマ化、日本でも映画化(吉永小百合ら日活娘で)や世界名作劇場でアニメ化、舞台にミュージカルに…と数知れず。
そんなルイーザ・メイ・オルコットによる米名作文学が、『レディ・バード』の絶賛が記憶に新しいグレタ・ガーウィグ監督とシアーシャ・ローナン主演の名タッグで新たに輝く。
『若草物語』と言えば…
南北戦争下の19世紀アメリカ。
北東部の田舎町。父は出兵。優しい母と暮らす四姉妹。
長女、メグ。美人でしっかり者。慎ましい結婚や生活を夢見ている。
次女、ジョー。活発で自由奔放。結婚願望は無く、将来は作家志望。
三女、ベス。内気だが心優しい。ピアノの才能に恵まれているが、身体が弱く…。
四女、エイミー。末っ子故ワガママ。将来は画家志望。
是非ともお近付きになりたいくらい魅力的な四姉妹。邦画で対する事が出来るのは『海街diary』の四姉妹くらい?
そんな四姉妹の他愛ない悲喜こもごも。
しかし本作では、回想する少女時代と生き方を模索する現代が交錯して展開。
NYで作家としてスタートし始めたジョー。
出版社に“友人”の小説として出したところ売れ(色々注文付けられたが)、嬉しさのあまりダッシュ!
この冒頭シーンだけでも、超絶魅力的なシアーシャ含め、新しい『若草物語』を作る甲斐があったと思った。
手紙が届く。ベスの病状が悪化し…。
ジョーは故郷へ戻る…。
作家スタートしたが、ある人物から指摘され、挫折。
故郷でも、メグは貧乏生活に悩み。
渡仏したエイミーも自分の実力の無さを思い知る。
皆それぞれ、人生の壁にぶち当たっていた。
そんな時思い出すは、姉妹一緒に暮らしていたあの頃…。
貧しい一家に食事を譲ったクリスマス。
四人でお芝居。
隣家の若者ローリーとの出会い。ローリーはジョーに想いを寄せるが…。
ローリーに憧れるエイミー。嫉妬からジョーと大喧嘩。が、エイミーが氷の池に落ちて…。
父の安否。母が向かう。その旅費としてジョーが自分の髪を切って売る。
ベスが猩紅熱に。皆で看病。
回復し、嬉しいサプライズが。父が帰還。
メリークリスマス。
喧嘩もしたり、色々あったけど、一番楽しく騒々しく、幸せだった。
遂にその時が。ベスが他界。
母親にとっては、身体の一部を失ったようなもの。
姉妹にとっては、分身を失ったようなもの。
やがてメグは結婚。エイミーは伯母と共に渡仏。
ローリーから愛を告白されるが…。
気付けば、自分だけ…。書く事も辞め…。
悲しみの中、生前のベスの言葉に励まされ、ジョーは再び小説を書き始める。
それは、“私たちの物語”…。
何と言ってもキャストが魅力!
先述したが、シアーシャ・ローナンが『若草物語』のヒロインを演じるってだけで、もう萌え~! さすが若手実力派トップなだけあって、単なる古典ヒロインではなく、現代にも通じる女性像を体現。
シアーシャと共にオスカーにノミネートされたフローレンス・ピューが確かにお見事! 少女時代はワガママでイラッ! が、渡仏してからは知性と品を兼ね備えた大人の女性に。その演じ分けが別人のよう。
メグにエマ・ワトソン、ローリーにティモシー・シャラメ、母親にローラ・ダーン、伯母にメリル・ストリープ…このキャスティングを聞いたときから本作を見たかった。
ユーモアや悲しみや感動も交え、快テンポ。
同じ原作を基にしていながら、これまでとはまた違った印象。
一応これまでの映画化も瑞々しい女性映画にはなっていたが、今回はより現代社会を反映。
原作者がモデルのジョーの自立した生き方、出版社の編集者とのやり取りは当時の女性の社会の地位の低さをチクリと。
女性の幸せとは? 結婚か? 自分の夢か? 涙ながらに胸の内を開けるシーンは男の私でもグッとさせられた。
これもグレタ・ガーウィグ監督の名演出あってこそ。
それから、『若草物語』が映画化された時の見物、美術や衣装の美しさも。
今回は少々凝った作りとは言え、話やオチは分かりきっているかもしれない。
それでもあの“傘の下で”“家族学園”“出版”の3段重ねのラストまで、何と全編心地よく幸せ。
やはり名作というのは、新しい要素を取り入れ、色褪せず、いつまでも魅了する。
決して100年以上も前のアメリカの田舎町の四姉妹に限った物語ではない。
日々の営み。
出会い、喧嘩、悲しみ、死別…。
旅立ち、挫折…。
夢、幸せ…。
これは、普遍的な“私たちの物語”。