劇場公開日 2020年6月12日

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「人生はパッチワークのタペストリー」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5人生はパッチワークのタペストリー

2020年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

軽快な音楽に合わせて四姉妹の溢れんばかりの喜怒哀楽がスクリーンから飛び出してくる。19世紀に書かれた名作文芸小説の映画化と聞くと敷居の高い作品かと身構えてしまうが、そんな心配は一切無用。ここで描かれているのは庶民の物語であり、私の話でもあり、あなたの話でもあるからだ。

仕事、恋愛、家族、財産、そして、自分の夢と幸せ。人生において、どれ一つでも欠けてはいけない大切なものであるが、その全てを両立していくことの難しさともどかしさ。誰もが抱えるであろうそんな悩みに向き合いつつも、前向きに生きていく四姉妹の物語を次女ジョーの視点を軸に描いていく。ここまでお読みになった方なら、もうお気付きだろう。男女平等や自由経済が謳われ、ガスや電気、ネットやスマホが発展しても、19世紀に描かれた物語が21世紀を生きる私たちの琴線に触れるのだから、社会の体質や人間の本質は変わっていないのだ。

特筆すべきは現在と実家で過ごした7年前とをパッチワークのように、それでいてシームレスに紡いでいくという構成。私たちが人生に迷ったり、立ち止まったりした時に、ふと過去の経験を懐かしむかの如く、この構成は現在と過去のコントラストを見事に強調し、彼女らが抱える悩みや感情の変化を我々観客の手元にまで優しく届けてくれるのだ。

そうして、私はすこぶる関心した。なるほど、人生はパッチワークのタペストリーなのだと。明るいトーンの場所もあれば、暗いトーンの場所もある。良いことも、悪いことも、グラデーションのように変わっていくのではない。生きていく中で、ふと布の継ぎ合わせを変えるだけで瞬く間に変わっていくこともある。でも、その継ぎ目が、転機がどこにあるのかを見落とさないようにしなさいと、この作品が教えてくれている気がしてならない。

老若男女に自信を持ってオススメできる良作ではあるが、特に主人公らと年齢の近い若い世代にこそ見てもらいたい。これはStory of “our” lifeであり、Story of “your” lifeでもあるのだ。

Ao-aO