「映画館へ行くことにまだ二の足を踏んでいらっしゃる方へも、この映画だけはお勧めしたい。」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
映画館へ行くことにまだ二の足を踏んでいらっしゃる方へも、この映画だけはお勧めしたい。
映画館で観れて本当に良かった❗️
心からそう思える作品でした。
すべてが可能な限り丁寧に描かれているのですが、そのすべてが冗長さに陥る一歩手前までで、次の展開に移るのです。極めて技巧的なのに、極めて自然な流れの中で、我々はすべての登場人物の心に触れた気になれます。
例えば、お隣の富豪のお祖父さんは、重要な役割を果たす人ではあるのですが、あくまでも脇役です。なのに、鑑賞後も主要人物たちとそんなに変わらない強さで印象に残っているのです。この人のベスへの思いを想像するだけでも、泣けてきます。
主役級の大物女優エマ・ワトソンもまったく違和感なく引き立て役を演じています。それでも主役を食わない程度には存在感があって、でも、決してそれ以上ではない絶妙さ。
個人的に一番ツボだったのは、ラスト数分の本が出来上がっていく工程の描写。
思うようにならないことばかりでも、ひとつひとつ積み重ねていくことで、なにがしかの形が出来ていく。
ページの切れ端のギザギザの切断面を揃えていくのも、糸で綴り込んで製冊していくのも、そのすべてが色々な人生が交錯していく様と見事にリンクしていました。それを見届けるかのようなシアーシャ・ローナンの表情は、誰がなんと言おうと、映画館のスクリーンで見るべきだと私は断言します。
【追記】
昨今のアメリカやヨーロッパにおける黒人差別への抗議活動のニュースなどを見聞きしている中で、この映画を見ると、ちょっと綺麗事過ぎるとか、限定的な階級に属する人たちの世界の話として、消化し切れないという受け止め方もあるような気もしたのですが、ローラ・ダーン演じる母親のように、宗教への敬虔さが深い慈愛に繋がることも理解できるわけで、そういうことを知ることができた、ということにも十分意味があると私は思いました。
ハリソンさん、そうおっしゃっていただけて、とても嬉しいです。
この先しばらくは海外旅行へ行くのは難しい状況で、異空間に浸れる数少ない場所が映画館。ひとりでも多くの方が映画を観に行ってくれると、社会のストレスが減り、世の中がほんの少し健康的になるはずだ、と私は信じてます。
琥珀さん 共感&コメントありがとうございます。
そうですね。エンディングの本が出来上がっていくシーンはワクワクしました。素敵な作品を大きなスクリーンで気兼ねなく観られるように早くなってほしいです。
琥珀さん、本当にそうです。何がかと言うと、結婚は女にとって恋とか愛とかでなくて、経済問題であるということです。
それから、本が出来上がる工程場面には、私も胸ときめきました。今はほぼ全部の本のページがすべすべだけど、昔は活字が立ってたし、本の香りもあったな、と思いました。
〝今も〟多くの女性にとって結婚は経済問題であることについて。
2016年のデータですが、母子世帯の母親の平均年間就労収入は200万円。
母親の貯金金額は50万円未満が約4割と最も多い。
だから、DVにあっても、経済的には夫に依存するしかなく家出も離婚も出来ず、耐えるしかない、というケースが相当あるとのことです。