劇場公開日 2020年6月12日

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「現代的な視点から『若草物語』を語り直した快作」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 セッションさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0現代的な視点から『若草物語』を語り直した快作

2020年6月12日
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傑作青春映画『レディ・バード』のグレタ・ガーウィグ監督による長編2作目は、
古典『若草物語』を現代的に解釈し、
見事な脚色でアップデートした、愛すべき一本でした!

19世紀のアメリカを舞台に、貧しくも幸せに暮らす四姉妹の姿と、彼女らのその後を、
次女ジョーの視点を中心に、時系列を入れ替えながら描きます。

女性にとっての幸せに主眼が置かれた本作ですが、
「結婚のみが女性の幸せである」という古い価値観自体は否定しつつ、
「愛する人と人生を共にすることの尊さ」も丁寧に描いた
監督の優しいまなざしが、私には非常に愛おしく感じられました。

自信なさげに小説を見せ、安い原稿料で売り払うOPと、
自分の作品の価値を高らかに宣言するEDの構成、
三女ベスの行末を案じたジョーが階段を駆け下りる、2つの場面の対比などなど、
呼応しあうシーンを随所に散りばめた演出もお見事。

過去と現在をせわしなく行き来する作りに若干の戸惑いを感じたものの、
このような語り口を選択した監督の意図が、しっかり伝わる作りになっています。

原作の内容を押さえていた方が物語を飲み込みやすいのは間違いないですが、
原作未見の私でも十分楽しむことができました。

シアーシャ・ローナン演じる主人公ジョーのエネルギッシュな魅力、
ローラ・ダーン演じる母親の、どんな時も為すべきことを行う気品の高さなど、
豪華キャストによるアンサンブルはどこを取っても一級品なのですが、特筆すべきは、新進気鋭の女優フローレンス・ピュー。 ⠀

前作『ミッドサマー』では「心に孤独を抱え、自分の居場所を探し求める」主人公を演じた彼女が、
幼さゆえにわがままな自分を抑えられない四女エイミーを見事に体現しています。

彼女が、ジョーに対して長年感じてきた負い目を吐露し、
自らの思いを打ち明けるシーンは、今作屈指の名場面でした。

語り口によっては時代遅れと捉えられかねない、難しい題材に、
ガーウィグ監督独自の作家性をごく自然に盛り込んでみせた本作は、
間違いなく現代に語り直す価値のある、素晴らしい作品でした。

巨匠アレクサンドル・デスプラによる美しい音楽を堪能するためにも、
音響の良いシアターでの鑑賞がオススメです!

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