「ガーウィックは、オルコットと自分自身のジョー像を見事に描いてみせた。」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
ガーウィックは、オルコットと自分自身のジョー像を見事に描いてみせた。
本作は、アカデミー賞脚色賞を『ジョジョ・ラビット』と競って、結果として賞は『ジョジョ〜』が獲得しました。どちらも原作に基づいた劇映画として甲乙付けがたい内容でしたが、本作は恐らく原作の読者を前提とした語り口であったことが評価の一つの要因となったのでは、と思います。
本作はもちろん、上映時間の都合上、取り上げる出来事は刈り込んであるし、時間軸も大胆に操作していますが、基本的には原作の諸要素に忠実です。もっとも、原作の筋自体は大きく変えない一方で、ガーウィック監督は結婚に幸せを見出すのか(メグ)、自分の道を突き進むのか(ジョー)、という重大な選択の場面で、かなり思い切った展開を提示しています。この展開には、ガーウィック監督自身の経験や価値観、そして原作者のオルコットの意志が強く反映されていることは間違いなく、少なくとも表面的には『若草物語』の世界観を壊さずに非常に現代的な視点を織り込んでいく手法にはとても感心しました。
あからさまな「神の視点」で語られることはないものの、本作が『若草物語』内世界に留まらない超越的な(メタ的な)視点を含んでいることは間違いなく、その点で邦題を、原題通りの『若草物語』ではなく、今回の表記とした配給側の判断も素晴らしいです。
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