劇場公開日 2020年6月12日

  • 予告編を見る

「2/3 試写会」ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語 とーりさんの映画レビュー(感想・評価)

5.02/3 試写会

2020年2月14日
Androidアプリから投稿

不機嫌なジョーは、感情溢れ満たされる傑作。この作品に恋に落ちた、すべての瞬間が愛おしい。焦燥も涙もそして笑顔も --- こんなにも豊かな情感に温かさで心揺さぶられるなんて、かけがえの無い余韻に包まれる。ジョー役シアーシャ・ローナンの名演技は特筆に値する。《表現》者グレタ・ガーウィグが監督した作品(『レディ・バード』)はもちろんのこと脚本/出演した作品を見ても女子が羨ましいと思うことがよくあったけど、本作は時代性によって抑圧・画一視された《女性性》とそれでも押さえることのできなかった自由への渇望を若者に寄り添った瑞々しい感性かつ、彼女自身文学にも精通し本作では多くのベテランも起用した玄人というより苦楽や痛みを知る大人/保護者寄りな温かな視点で描き切る。結婚することだけが幸せとは思わないけど、やっぱり孤独を感じるし愛されたい。唯一気になったのは昔と今が交互に行き交うストーリーテリングだったけど、それも途中から気にならなくなり、後半・終盤に差し掛かる頃にはそうしたアプローチこそが本作のパワフルさにも結実しているようにすら感じられた。故に、いくらかの古典は今日でも十二分に通ずる普遍さ・メッセージ性を備えていて、今日に語り直す価値があると力強くもしみじみ思わせてくれる。『ナイブズ・アウト』に並んで去年から現時点で今年最も見たかった本作は、そんな高い期待を優に越えてくる素晴らしいものだった。今解き放たれる人生豊かにする本物の映画の魔法。見た多くの人にとって特別になるだろう。また見たい、何度でも何度でも頁をめくるように。
痛いほど分かる --- メグ、執筆ジョー、絵画エイミー、音楽ベス、そして近所のローリー"テディ"にフレデリック、誰もが魅力的で共通性がある。性別こそ違えどジョーにも少し自分を見出せたし、けどやっぱり自分はエイミーかなぁなんて思う瞬間もあった。鈍臭さも向こう見ずな所も負けん気強くて勝ち気な性格も不貞腐れたり意固地になったり。それはやっぱり感情の機微にしっかりと寄り添い向き合ったグレタ・ガーウィグの脚本に出演者と信頼関係を築いたであろう演出の賜物でありつつ、キャストも皆素晴らしい好演・名演によるアンサンブルを奏でている。それを更に押し上げ世界観・没入感を際立たせるべらぼうに光り輝く《衣装》もまた広く評価されるべき、撮影も音楽も良い。とりわけ(毎度ながら)シアーシャ・ローナンとフローレンス・ピューの演技は圧巻。そう、この二人こそ上述したように特に共感を覚えた二人だ! 個人的にシアーシャ・ローナンは最も好きな役者の一人であり、メリル・ストリープに匹敵する名女優だと確信してきたので、今回そんな二人の初共演(多くはないけど...?)見られて良かった。相棒/盟友シアーシャ・ローナン × 旦那役?ティモシー・シャラメは、エマ・ストーン × ライアン・ゴズリング、蒼井優 × 池松壮亮に並ぶ名コンビ(あとクリステン・スチュワート × ジェシー・アイゼンバーグも?)。他にも母親役には『マリッジ・ストーリー』のノリノリな弁護士役とは打って変わってのローラ・ダーン、父親役にはボブ・オデンカーク、そしていい味を出すテディの祖父でベスと通ずる隣人クリス・クーパー。往年のジェームズ・アイヴォリーがジェーン・オースティンを映画化したみたいな雰囲気、とでも言うか、安直な表現になってしまうが最高。他人事も私事にしてしまう。自分の感性刺さりまくり琴線触れまくりということもあるけど、それ差し引いたところでやっぱりグレタ・ガーウィグは今最も目が離せない映画人だ、確約/保証しよう。自分もうだうだ言ってないで書こう。

にしてもやっぱりワンダイが歌い出しそうなこの邦題は...苦笑

とぽとぽ