劇場公開日 2020年7月24日

プラド美術館 驚異のコレクション : 映画評論・批評

2020年7月28日更新

2020年7月24日よりヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほかにてロードショー

「絵が語りかけてきたら、耳を傾けるだけでいい」修復のプロの言葉にハッとする

世界三大美術館と言えば、ルーブル(パリ)、メトロポリタン(ニューヨーク)、エルミタージュ(サンクトペテルブルグ)といったところですが(諸説あります)、四大美術館とするなら、これらに加わってくるのは、マドリードにあるプラド美術館でしょう。

この映画は、プラド美術館の成り立ちと現代にいたる歴史、そしてもちろん、美術館に所蔵されている作品群を紹介するものです。

美術館そのものは1819年の開館ですから、昨年(2019年)が200周年のアニバーサリー。そのコレクションは15世紀から18世紀のものが多く、それはスペインの黄金時代(=大航海時代。15世期末から17世紀にかけて)とかぶっています。

ティツィアーノ、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコらの作品がひときわ多く、映画の中で何度もフィーチャーされますが、ベラスケスとゴヤについては分かります。この2人はスペイン人です。プラド開館時に存命だったゴヤの絵画は、この美術館に932点もあるそうです。

でも、なぜティツィアーノ? エル・グレコ?

この2人のベネチア由来の画家に関するエピソードは非常に面白い。当時の美術界におけるベネチアの格の高さが分かります。ヨーロッパの王侯貴族は、皆、ベネチアに絵画を注文しに行ってたんですね。

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私は、プラド美術館は未訪問で、この映画でヨーロッパの美術史を勉強しなおすように見入っていました。しかし、もっともハッとさせられたのは、美術館で修復を担当する部門の幹部の言葉です。

「絵が語りかけてきたら、耳を傾けるだけでいい。修復が不十分であれば私たちに訴えてきます。とても苦しそうなんですよ」

彼らは日々、絵と対話しています。絵が「苦しい。辛い」と訴えてきたなら、彼らの出番が来る。

同じ人物が、映画の序盤で語る言葉は、さらに印象的でした。

「それぞれの絵画から、画家独自の音が伝わってきます。ゴヤの『吹雪または冬』からは風の音がします。それとは別に雪が降る音や雪道を踏む足音も聞こえるでしょう」

個人的に、絵から音が聞こえた経験はありません。いや、聞こうとしていなかった。音のことなど考えたこともない。

ちなみに、ゴヤはこの「吹雪または冬」を描いた数年後、40代半ばで聴力を失いました。もしかしたら、キャンバスの中に音を塗り込めようと試みたのかも知れません。

次回、絵画を見に行く時は、音を感じてみようと思います。絵画鑑賞に対する新しいチャレンジです。

駒井尚文

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