劇場公開日 2020年2月29日

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「まさかここまでとは…、と改めてシリア危機の実情を実感する100分間。」娘は戦場で生まれた yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0まさかここまでとは…、と改めてシリア危機の実情を実感する100分間。

2020年6月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作はシリアの大都市、アレッポで生まれ育ったジャーナリストと医師、そして彼らの娘の視点で捉えたシリア紛争の記録です。

 冒頭わずか数分、橋の周辺でのある出来事から、いきなり信じられないような状況に突き落とされます。その後も目を覆いたくなるような映像の数々。最後まで見通せなかった観客が多くても不思議はないです。これが演出された映像作品であれば、途中から感覚が追いつくこともあるでしょうが、本作で写し取られた映像は紛れもなく現実に起きたことです。そのため決して心理的な衝撃が軽減されることはなく、その意味では非常に辛い100分間を過ごしました。

 しかしカメラは、残酷な現実だけではなく、奇跡としか思えないような場面もまた克明に写しています。ちょうど映画中盤のある緊迫した状況では、その思いも寄らぬ帰結に思わずため息をついたのですが、周りの観客も同じく反応を示していて、こうして感覚を共有できる人々に囲まれているありがたみを実感しました。

 シリア紛争(内戦)は、今世紀最大の人道危機と言われてるにも関わらず、その実情は本作を含めた映像作品や報道を除けば非常に乏しい情報しか伝わっていないのが実情ということです。まだ未見なのですが、本作と同様にアレッポの状況を捉えたドキュメンタリー映画として『アレッポ 最後の男たち』(2017)などの作品群があります。これらも観なければ、と強く感じました。

yui