地獄の黙示録 ファイナル・カットのレビュー・感想・評価
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「大人」になってから見ると…
ひとを狂わせるもの
私のようなにわか映画好きにとっては「とてつもなく有名だけど観たことない映画」が大量にあって、当然「地獄の黙示録」もそれにあたる。
で、今回IMAXで観られる機会を得たので行ってきたわけです。
話の筋はもちろん大体知ってはいるが、いや観るとあれね。本当に地獄ね。
鏡を殴って流血する、いかにもやばめなマーティン・シーン(若いな)がドアーズに乗って登場。
そしてロバート・デュヴァルのキルゴア中佐ですよ。強烈だ。戦場にサーフボード!サーフィンするために村を焼き払え!危険ななかで波乗りさせる!よく分からないけどとりあえずガンガンぶっ放す!なんとも趣味の悪い(けど悲しいかな、合ってると感じてしまう)「ワルキューレの騎行」!キルゴア中佐が "I love the smell of napalm, in the morning." って言ったときは「言ったーーーー!」って思ってしまいました。
前半というか、かなりの部分がただただ「戦争の狂気」を見せつけてくるやつ。マーロン・ブランド出てこなくてもこれだけでヤバい映画だな!というくらい、戦場はタガが外れている。制御を失ってしまった兵士たちの姿。何もかもに過敏になりすぎて神経をすり減らし、薬に走る様。
マーティン・シーンのウィラード大尉も冷静そうだけど、既に「取り憑かれて」しまっている。戦場にしか居られなくなってしまった奴。戦争を虚無と思いながらそこから抜けられない奴。
マーロン・ブランドはあれだけしか出てこないのにまじやばかったですね。いやもう...バッチリ映ってるとこほとんどないんですけどね。体型が当初のイメージと違いすぎて物語を変えさせてしまったというマーロン・ブランドですが、色々あっても台詞をひとこと発するだけで世界作るのはやっぱりやばい。戦場で生まれてしまった自分でも制御できない哲学っていうかね...。そういうのは感じた。
なんだか後半に進むにつれてどんどん映画も憔悴してくというか、実際マーロン・ブランドはあれだし、デニス・ホッパーは台詞覚えなかったらしいし、マーティン・シーンも倒れたし(というかそもそも最初の主役のハーヴェイ・カイテルは降板したし)、何もかもが壮絶だわな...。
ちなみにフランス人入植者のシーンは公開時にはなかったそうですね。あそこが一番知識が要るシーンだった。
「映画」として圧倒的に映像で押してくるものを感じた。美しいとか、気持ち悪いとか、怖いとかを超えて攻めてくるもの。物語は正直まとまりがなく散漫な部分も多いのだが、それでもなお「押して」くる。これでもかと。
しかしコッポラは三島の「豊饒の月」読んでイメージを膨らませたって何かで読んだけど、悲しいかなそこは読み取れない私なのであった。
そしてまあどうでもいいですが、戸田奈津子さんの字幕はやっぱり意訳がすごいね。良いとか悪いとか判断できるほどの英語力はないが。
時代
70年代のアメリカが輝いていた頃にこの映画を見るのと、現代で見るのでは全然違うだろうなーと思う。
ベトナム戦争が失敗だったのなんでもはや自明だけど、あの頃はまだ揺れてたし、アメリカは圧倒的だった。
有名なワーグナーのシーンは意外と前半だった。後半はややぐだぐだしているような…。キルゴア中佐の頭のおかしさが際立つ。ああいう人アメリカ系外資にいる!出世するタイプ。あとは植民地白人(フランス系)の傲慢さとか。
ウィラードはもう戦場にしか生きられないし、帰るところも故郷もない。カーツ大佐と同じ。かわいい子供たちも思い出の中だけ。ウィラードはどこにいくのだろうか。鹿狩り?
カンボジア人あんなに未開人じゃないだろ…。
ヘリに手投げ弾投げる女の子ね…。すごい。
IMAXで是非見るべき
地獄の黙示録 ファイナル・カット (2019)
フランシス・フォード・コッポラ監督が再編集とデジタル修復を施したIMAX版ファイナルカットです。
上映時間は3時間の超大作ですが名作は何回見ても面白い。
前半のワーグナーの音楽とヘリコプターの激しい戦場シーンだけでもIMAXで見る価値ありです。
相変わらずカーツ大佐の意味不明なセリフも多々ありますがそれも含めてこの時代にこの作品を作り上げたコッポラ監督の執念が素晴らしい。メイキング映画 ハート・オブ・ダークネス コッポラの黙示録 も見れば、多くのトラブルに見舞われたこの映画が完成できた事だけで凄いというのが良くわかります。
この機会にIMAXの大画面で是非ご覧ください。
一生に1回は見るべき映画です。
追加シーンはやはり蛇足だが
重いテーマの冒険RPG
40年ぶりに観ました。当時は中3であまり記憶に残ってません。
そんな訳で自分的には、ほぼ新作を観たという感じです。
観終わって、これって何かと同じ感覚だと思い浮かんだのは冒険RPG。
メインキャラがユニークな仲間を連れて謎めいたラスボスを倒すまでのストーリー。
ボートで共に進行していく過程で遭遇するイベントの数々。幾度となく「YES」「NO」の選択場面があり、自分ならどうするかと考えさせられる。コントローラーがほしい。
そしてサーフィンの一幕はドリフの「もしものコーナー」を想起してしまいました。
「もしもサーフィン好きな指揮官がいたら♪♪♪♪」ダメだこりゃ
重いテーマの作品ですけどコッポラ監督が観客を楽しませてやろうという意欲がひしひしと感じられます。
この映画を観て久し振りにRPGをプレイしたくなりました。
狂気に浸れる幸せ
心の闇を覗く
映画で初めて、戦争のPTSDを見たのは地獄の黙示録だったと思う。
ウィラードだ。
初演当時は、そのPTSDという言葉を知らなかったが、今、改めてそう思う。
今では、ベトナム戦争だけではなく、イラク戦争などの帰還兵のPTSDもアメリカの社会問題だ。
そして、ベトナム戦争が泥沼化してから始まった徴収兵制度は、若者を巻き込んで、アメリカの価値観を内外から揺さぶり、どん底に突き落とす。
爆弾が飛び交うなかでのサーフィンや、プレイメイトの慰問の場面に、この戦争に大義などなかったことを感じる。
戦争でもマニュアル通りであろうとするもの、取り敢えずマシンガンをぶっ放したがるもの、音楽をかけゲーム感覚のもの。
兵士として訓練も行き届いていなかったのではないかと考えさせられる。
取り返しのつかないと気がつく前に、命を落とすしか無いのだ。
そして、ナパーム弾を使用して、ベトコンの隠れるジャングルを焼き払おうとするが、多雨で湿度の高いベトナムでは効果は限定的だった。
同時に使われた枯葉剤もナパーム弾も今では米軍で残虐性や環境の観点から使用が禁止されている。
ベトコンの地の利を生かした戦いはアメリカを凌駕し、アメリカの戦いは泥沼化の一途を辿る。
そして、カーツ大佐の王国。
カーツは何を見たのか。
映画の完成後に、コッポラは、この映画のテーマは何かと問われ、撮ってるうちに分からなくなったと答えた話はよく知られている。
カーツが何を見ていたのか、考えたのか。
想像することは自分の心の闇を覗くようでもある。
力を持つことによって、自分の王国を築きたかったのか、神になりたかったのか。
或いは、混沌とした世界に秩序をもたらそうとしたのか。
もしかしたら、両方かもしれない。
だが、いずれにしても、屍が転がり、遺体が木々に吊るされるような暴力と搾取の王国は、砂上の楼閣でしかないように思える。
そして、もしかしたら、コッポラは、今僕たちの生きる世界は、このカーツの王国のような世界と同じようだといつの間にか期せずして示すことになっていたのかもしれないとも思う。
世界のあちこちで戦闘は続き、宗教を背景にしたテロ、アメリカの銃の乱射事件は後を絶たないし、ネットの攻撃やフェイクニュースの悪意は、どこかで善良な人々を常に追い詰めている。
この映画は、自分の心の闇を、そして僕達の生きる世界の闇を覗くような作品だ。
この作品の元ネタとなったのは、「闇の奥」というコンラッドの小説だ。
アフリカの奥地で行われた搾取や植民地帝国の様を描いたとされる。
その頃と、僕達の世界はあまり変わってないのかもしれない。
ジゴモクを映画館で鑑賞できる楽しさ。
IMAXが凄い!
40年ぶりの劇場での再観に、当時を凌駕する程の衝撃
当時、70mm版に拘って日比谷の有楽座で鑑賞し、そのあとでエンディングロールが付いた35mm版でも観ている。
しかし当時は、当時伝わってきていた(マックィーンらの)大スター級の俳優の出演は結局叶わず、知名度的に当時まだ弱い感じの、マーチン・シーンとほぼ無名のクルー達に、脇役クラスだったデュバルという出演陣には、正直少々ガッカリしたものだった。
(その辺りの経緯は、例のドキュメンタリーでも語られている)
今回、数十年ぶりのグランドサンシャインのレーザーIMAXでの鑑賞で、その有楽座で初見した時の記憶が蘇ってきた。
改めて観て、CGの無い当時もすごい迫力に(出演者の件を忘れさせる)度肝を抜かれた感が有ったが、ムシロこの現代に観る事で「有り得ない、戦場の完全再現」が実写である事に当時よりも強いくらいの衝撃を受ける。
恐るべき映画であると思うと同時に、アメリカ人というものの傲慢さ身勝手さに嫌悪感を抱く。
そういう「戦場の目撃者」であるように錯覚を覚えさせるほど、恐るべき映画であるということであろう。
ストーリーを知りたいだけならDVDやBD等のホームメディアで十分だろう。
しかし、この映画の本質を知りたいのなら、劇場での鑑賞は絶対の条件であると確信する。
ただ、今回のバージョンは前の完全版程は長くないが、それでも前半の見せ場が余りに圧倒的すぎることからか、後半にかけてがやや間延びというか、緩慢に感じられるフシはあると思った。
もう一つ、今回の版もエンディング自体は(70mm版と違って)付いているものの、当時の35mm版にあった「カーツ帝国の(爆撃による)徹底破壊」映像がその背景に映し続けられる部分は使われていなかった。
個人的な印象では、シンプルで手堅く(資金を出資したヘラルド映画の意向で)シェイプしてまとめられていた「初公開版」も捨てがたいと思った。
更に細部を徹底して知りたい向きには、むしろ完全版も是非どうぞと言ったところか?
今回の版はその中間をいく感じの、良いとこどりといった趣向のようです。
これが「劇場での初体験」という方にとっては幸せなこととも言えそうです。
主演、マーロン・ブランド??
デジタル・リマスターって凄いのねー👀(しみじみ)
一昨年、『恐怖の報酬』のデジリマ観たときにも思ったけど、これだけの年月を経ている事を全く感じさせない!最新作のような画像で若かりし頃のハリソン・フォードが見られるとか感無量!!IMAXで観てよかったー(*´ω`*)
180分の長丁場映画だったけど途中飽きることもなかったからきっと面白かったんだと思う。でも厳密に言うと、前半部分(ミッション伝達、サーフィンの下り、子犬見っけ)は面白かったが、後半部分(フランス人一家登場、ラスボスの件)については続きが気になって観はするが期待を超える内容では無かったのが正直なところ。
この映画を観てると「戦争=狂気の沙汰」という言葉がピッタリ当てはまる。ウィラード大尉の正気の方がむしろ異常で、他のみんなはデフォルトが狂気。
戦争を経験してないからリアルとは違うのかもしれないけど、でも戦争のような非日常に身を置くと感覚がオカシクなってしまうんだろうなーと予想。
娯楽映画としてのキルゴア中佐は爆笑の連続だったけど、現実であれをやられちゃたまったもんぢゃーない。
狂気(というか共通の感覚)の中で共存している、という意味では『ミッドサマー』と通じる部分があるかも。
ラスボスは満を持して登場した割にはなんだかよーわからんかったけど、180分で終わってくれてよかったwww
そもそも、この映画の主演がマーロン・ブランドっておかしくないですか??^^;
子犬がかわいい
真善美、とは限るまい。
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