「苦み・エグみ・旨み」一度も撃ってません sak.tmさんの映画レビュー(感想・評価)
苦み・エグみ・旨み
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久々の映画館、タイトルで選定。
正直そこまで期待していなかったが、味のある作品だった。
ひと昔もふた昔も前に流行ったハードボイルドな世界観に憧れつつ、その世界に身を投じることができないまま年老いてしまった「ちょいグレ作家」が主人公。
自分の家族にも松田優作好きの公務員がいるが、そういう人って意外と多いんじゃなかろうか…
展開はゆっくりだし、細かく見ればやや無茶な設定もあるのだが、
悪役含め登場人物それぞれに愛嬌があり、つい魅入ってしまうシーンが多かったのは、やはり超豪華キャスト陣の成せるワザか。
(鑑賞目的の一つだったトヨエツなんて、「え!?これだけ!?」という扱いだったけど、それでも出演するトヨエツ素敵。)
ベテランたちの掛け合いはまさに「神々の遊び」といった感じで、そこが拝めるだけでも見る価値があったと思う。
そういう余地を残したシナリオ・演出が出来ているのも、満足できた要因の一つかと。
ラスト、ピンチを乗り越えた一行が祝杯を上げるシーンで終わらず、解散シーンまで映したのがよかった。
思い描いた通りには人生を歩めなかった登場人物たちが、危機を通して一時の高揚感を得る。けれどそれが過ぎ去れば、再び独りに戻っていく。
「夜は酒が連れてくる」令和にはクサすぎるような台詞だけど、心地のよい厭世観というか、終わらせ方の美学のようなものを感じた。
スケールで魅せる作品が多くなっている中で、こういうものが小規模でも作られ続けるのはうれしい。
登場人物たちがさらにヨボヨボになった続編、出来ないかな…
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