「一生に一度の・・・・・は過剰JARO」WAVES ウェイブス カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
一生に一度の・・・・・は過剰JARO
これはアメリカの裕福な黒人家族のお話。 前半はお題を付けるとすれば、「タイラーのバカ」一番バカな点は彼女に妊娠を打ち明けられてからの態度。なにがなんでも堕胎を迫り、親に相談したことさえ責める。恐ろしいほどだった。その次はすぐ手術が必要な重症の左肩関節唇損傷 SLAP lesion を親に報告しないところ。担当医は継母が医者であることを知っていたのか、じゃあ母親には自分から話せるよなと念を押すのだが。おまけは父親の鎮痛剤を黙って飲み、水筒に容れたウオッカで流しこみ、車運転するし、マリファナも吸う。彼女はパーティー会場で突き飛ばされて床に頭を打ち、頭から血を流してあっさり死んでしまう。パーティー会場に乗り込むシーンも酔っており、なんかスリラー調。やな予感しかしない。救急車も呼ばず、自宅に逃げ帰る。背景にはスパルタな父親からのプレッシャー。スポーツ推薦で有名大学に進めと呪文のように繰り返し言われていたのか。とにかく自分の保身が一番なのだ。優しさの微塵もない。筋肉💪バカ。それにしても、まだ1時間あるし、この先どう展開させるのよ。スクいようないしと不安になった。飲んではトイレや風呂場でゲロする場面も多すぎ。こっちもヘドがでそうなくらいダメダメ。なのに夜中に甲斐甲斐しく兄をバスルームで介抱する妹のエイミー。優し過ぎでしょ。禁断の近親相姦モノになってしまうのかとチラッと思ってしまうほどでした。
さて、後半はと言いますと、妹エイミーの物語。眼がとてもかわいらしい。右眼の横から頬の皮膚が白っぽい。生まれつきの白斑症なんだと思う。メイクで少し隠している感じ。そんなところもいじらしい。決してすごい美人ではないが、人からは美人だねと言われる。心の美しさと謙虚さが出ているのだと思う。兄の殺人罪が確定したあとの家族の変化と学校でも人を避け、心を塞いでしまっているエイミーに好意を寄せて、ゆっくりと近づいてくる白人の男性生徒ルークとの恋とルークの何年も会っていない父親の最後がからむ青春ロードムービー。ミズリー州まで丸2日。立ち寄ったモーテルでの合体シーンも優しく実に初々しい。エイミーの父親がエイミーを釣りに誘い、懺悔し、謝罪するシーンもあり、すっかり関係が悪化した母親との橋渡しをエイミーに託すシーンあり。思い遣りに溢れる彼女の行動や言葉にあわせて、かかる曲の歌詞がその場の状況や気持ちとリンクするので、セリフや説明は少なくても、感情に訴えかける構成。
映画の冒頭と最後は短パンのエイミーが自転車で並木道を晴れ晴れとした感じで走り抜けるシーン。前進あるのみと。最後は青春映画ですね。要するに、人には愛情と思い遣りを持って接することが一番大事なんだということです。余裕がないとついおろそかにしてしまうんですけどねえ。人生ついてないと、擦れっ枯らしになっちゃうし。
後半はメインのエイミー主役の映画だったわけです。タイラー役はもちろん熱演でした。レスリング試合のシーンもリアルでした。しかし、みんなこの際、エイミーの映画なんだと割りきりましょう。
アメリカ映画なのになんか説教くさいお金のかかってない邦画みたいな感じでした。一生に一度の・・・・・は過剰JARO。
エイミー役の彼女の次回映画出演を楽しみにしてます。また、ルーク役のルーカス・ヘッジズ君は近日公開のハニー・ボーイでの主演あるので、楽しみです。