「若者にも大人にも人生は寄せては(与え)返す(奪う)波。その波間で揺れる私達はjust human beings。evilでもmonsterでもない。妹の幸せな人生を切に願う。」WAVES ウェイブス もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
若者にも大人にも人生は寄せては(与え)返す(奪う)波。その波間で揺れる私達はjust human beings。evilでもmonsterでもない。妹の幸せな人生を切に願う。
①全く前知識無しだったので最初はいま流行りの音楽に乗せたチャラそうな若者映画だろうと思っていたら、人間を良く描いた優れた映画であった。②妹役の子が可愛い。しかし、前半と後半で視点がゴロッと入れ替わる点が斬新。兄の視点から描く前半では単なる脇役の一人と思っていたのが、後半は一転妹の視点から描かれる。後半はどうか妹には幸せになって欲しいと願わずにはいられなかった。③子供にベッタリし過ぎの日本の親も良いとは思わないが、USAの親は少しよそよそし過ぎる(子供の自立に頼り過ぎな)のではないか。アレクシスが結局親に頼ったところを見ると、やはりタイラーとエミリーの家族は問題があったのか。継母でもあっても母親は愛情を持って二人を育てたし、父親も厳しすぎるところはあるが彼なりに一生懸命生きているように見えるのに。③ルーカス・ヘッジはやはりいまUSAの白人のやや屈折しているが好ましい青年を演じさせては一番の俳優であろう。今回はストレートの高校生で(だってゲイ役が多いもの)妹を優しく包み込むボーイフレンドを控えめながら好演して存在感を示している。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」の頃から比べると随分大人ぽっくなってきた。④「wave」にはお想いや感情の高ぶりという意味もある。その意味ではタイラーは一時の感情の高ぶりによって寄せる波が砂の城を壊してしまうように、彼の人生やそるまでかろうじて保っていた彼の家族、アレクシスの人生、アレクシスの家族まで壊してしまった。波が引いた後は何も残っていない。でも人は次の波が来るまでにまた砂浜に新たなものを築いてゆく。次の波に壊されない確固としたものを、そして観ている私達も次は壊されないように祈ろう。