劇場公開日 2020年7月10日

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「「波」のごとく押し寄せるエモーションに圧倒される」WAVES ウェイブス せき(名前変えました)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「波」のごとく押し寄せるエモーションに圧倒される

2020年7月10日
iPhoneアプリから投稿

アメリカでは公開されるや否や、
「一生に一度の傑作」「今年、最もまばゆい体験」と激賞された本作は、
豪華アーティストの楽曲・鮮やかな色彩・エネルギッシュな登場人物に魅了され、
「波」のごとく押し寄せるエモーションに圧倒され尽くした2時間でした!

フロリダの裕福な家庭に育った高校生タイラーと妹のエミリーが、
「ある悲劇」をきっかけに幸せな日常を失っていく姿を描きます。

超豪華”プレイリスト・ムービー”としての側面が取り上げられがちな本作ですが、
個人的に最も感銘を受けたのはフレッシュな撮影技法の数々です。

OPから目まぐるしく回転するカメラワーク、
人物の表情を捉え続ける過剰なまでの接写、
赤と青の対比が象徴的な、バキバキにエッジの効いた画作りなどが、
タイラーたちの感情を何よりも雄弁に語ってくれます。

撮影監督を務めたドリュー・ダニエルズさんの存在は今回初めて知りましたが、
今後大作映画に参加し、更なる名声を得ること間違いなしでしょう。

一方、不安感を煽る音楽や効果的な無音使いによって、
いつ決壊するか分からない恐怖を演出したトレイ・エドワード・シュルツ監督の手腕もお見事。

ホラー映画上がりの彼だからこそ生み出せた、緊迫感溢れるシーンの連続は圧巻でした。

そして忘れてはいけないのは、傷心したエミリーを温かい眼差しで支えるルーカス・ヘッジズ。

お前が童貞なわけないだろ!とやっかみたくなる甘いマスクの彼ですが、
卓越した演技力により、エミリーとの距離を一歩ずつ詰めていく姿が心底リアルに感じられます。

彼らの、思わず吹き出しそうになるほど不器用なキスシーンが非常に印象的でした。

「息子役を演じさせたらハリウッドNo.1」との呼び声も高いルーカスが、
同世代のトム・ホランドやティモシー・シャラメらとともに、どんな成長を遂げていくのか楽しみでなりません。

最後にもう一つ取り上げたいのは、エンドロールで流れる『Sound and Color』という曲。

「人生ってすごく変だよね」という歌詞は、
挫折しても悲観的になるのではなく、軽い気持ちで生きていけばいいんだよ、
という監督からのメッセージのように感じられ、爽やかな余韻を与えてくれる一曲でした。

新進気鋭の製作陣に自由を与え、作家性に富んだ作品を生み続けるA24は、
またしても傑作を世に送り出してくれました。

本作の鑑賞後は、TBSラジオ『アフターシックスジャンクション』にて監督インタビューを聞いていただくのがオススメです!

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