「心を通わせる大切さ」WAVES ウェイブス KZKさんの映画レビュー(感想・評価)
心を通わせる大切さ
とても見応えがありこの作品の世界観に早い段階で入り込み没頭して鑑賞する事ができた。
個人的には序盤のタイラーのような心情描写の経験があり同時に今でもトラウマとして残ってる事もあってか凄く感動した作品となった。
冒頭はタイラーの順風満帆なスクール生活から始まる。
勉強にも熱心で部活もにも精力的に励み父親もとても期待している姿が見受けられる。そして彼女とも愛を育みパーフェクトなスクール生活であろう。
そんな順風満帆な生活を送ってるタイラーだがどことなく不安な様子が見受けられる。それは彼の心の声や真なる気持ちが作中で描かれておらず観客側としても不安が生まれる。
父親も期待するが故にタイラーには厳しく接してしまう事でタイラーもまた期待に応えようと体面を気にし、心の内を隠して生活を送ってしまってるわけだ。
そこで大きな出来事に直面する。それは彼女が妊娠してしまうのだ。タイラーはどうしたら良いか分からない。体面を気にする事で父親にそして家族にも話す事、相談する事もできない。そんな中彼女は出産する事を決め、中々答えを出さないタイラーに見切りをつけ別々の人生を歩む事を決断する。
ただ決してタイラーは出産する事を否定してたわけではない。どうしたら良いかわからず悩みもがいていただけである。その心の声が彼女に届かず、激しい言葉でぶつける事しかできず最後は不意な暴力から彼女を殺害して終身刑となる。
残されたタイラーの家族もこの事件をきっかけに更に互いの心の声を閉ざし、家族の気持ちも距離ができてしまう。
そんな中妹のエミリーに恋人ができ時間を重ねる事で心を開き、真なる気持ち、心の声を届ける事で関係を深め合っていく。
この姿は非常に美しく感じ、同時に心を通わせる事の大切さを強く感じさせてくれるわけだ。
エミリーの恋人ルークは酷い仕打ちを受け、もう何年もあっていない父親が末期である事を知る。最初は強がりいい気味だなんて言ってたがエミリーに本当は会いたい心の気持ちを伝える事で、会いに向かい最高の時間を過ごす事ができた。そしてその現場に居合わせエミリーもその姿の大切さに気づき、父親そして母親に本当の気持ちをメッセージで伝えた所でこの作品は終わるわけだ。
人に素直な気持ちを伝えることはとても勇気がいることである。時には素直な気持ちを否定される事もあるだろう。素直な気持ちほど否定されれば傷つき苦しむ。
それを恐れ人は徐々に素直な気持ちを伝える事を避け自分を守ろうとしてるわけだ。
ただやはり人は1人では生きていけないものだ。自分1人で常に正しい答えに導く事ができる程人生容易ではない。特にタイラーのように憎しみに心が駆られた時程人は正しい判断ができなくなるものである。
ただそういう窮地に立たされた時だけ都合よく人に頼り救われる事もまた難しいだろう。
だからこそ日常的に互いに心を通わせ、信頼関係を築くことが大切になっていくのであろう。
タイラーもそうだが、盲目になってるほど案外簡単な答えほど見えなくなり、人に頼ると案外単純な答えに導いてくれてたりもする。
心を閉ざすと相手もどうしても警戒してしまう。この作品でいえばタイラーの殺害行動の前に周囲が止めるチャンスは各々あった。しかし信頼関係がないと一歩踏み出す事に躊躇う間が生まれてしまうのだろう。
この作品を観てるとちょっとした瞬間、きっかけが人生大きく左右する事が分かる。これはフィックションだからではなく自分の人生振り返っても実感することはいくらかある。
ただ過ぎたことを悔いても前に進まない。間違った道に進まないようにする事が大切である。
ではそれはなにが大切なのか。上でも述べたようにやはり人間関係なんだと思う。困った時に助けてくれるのら周囲の人間である。その時に正しく導いてもらうには、自分のことを知ってもらう必要がある。
だからこそ日常的に素直な気持ちを伝える事が大切なんだとこの作品を通じて実感させられる。
素直な気持ちを伝える事と同時に、周囲が自分に素直な気持ちを伝えられる環境を作る大切さも実感させられた。
個人的に非常に現実味溢れる作品でとても心に残る作品であった。