「リアリティの無い人間ドラマ」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) てらゆうさんの映画レビュー(感想・評価)
リアリティの無い人間ドラマ
登場人物に悪者が多い話は好きじゃない。
もっとも、最初から「悪者」をテーマとした作品であれば問題無い。
しかしこの映画は、何かを引き立てたり、強調するために無理矢理悪者を登場させてる感が強い。
例えば、車イスにぶつかっておいて「てめぇからぶつかってきたんだろ」と暴論を吐く男。
ジョゼを外出させない訳は「外の世界は虎ばかり」とのことだったが、こんな奴ばかりいてたまるか。
外出しない理由付けとしては少々無理矢理ではないか。実際車イスで外出してる人なんて現実世界には大勢いるのだから。
ジョゼの性格も捻くれが過ぎる。
体を張って助けてくれた相手に、お礼を言わないどころか、噛み付いて変態呼ばわり。
この時点で人格歪みすぎてて好感度ゼロである。
この先恋愛ストーリーに持っていくからには、それ相応の株UP展開が必要だと思うのだが、なんか流れで付き合っちゃった感が強い。
他にも主人公の友人女性や、教育施設?の男性など、とにかく性格や口の悪い人物がこれでもかと現れる。
世の中そんな酷くない。展開を進めるための「無理矢理感」があまりに目につく。
そんな「無理矢理感」はとどまることを知らない。
主人公は金払いが良いという理由だけで、会ったばかりのバイト勧誘を了承。
更には、当日までバイト内容すら聞いてない。
友人の前でジョゼの悪口を吐くほどストレスになっているのに、高額な給料に釣られて辞めない。
挙げ句の果てに、中盤以降はジョゼとデートしてただけなのに、普通に給料を貰っていたらしい。
心臓の悪いお婆ちゃんと車イスの少女という家庭から、高額な給料を…。
ちょっとした矛盾なんかは「まあ創作物だし」で済ますのですが、一つ一つの展開がいちいち無理矢理で、お話の肝となる部分もとなるとさすがに看過できない。
リアルな人間ドラマを描く作品なのに、リアリティーが無いのは致命的だと思う。
「怖いものを見ておきたい」との理由で二人で見に行った虎を、終盤はジョゼ一人で観に行った。
主人公の海外留学を前に、一人で生きていく決意を象徴するシーンである。
この辺は非常に小説的で素敵な描写だなと思うので、こういった良さを活かしきれない雑さが残念でした。