「閉塞感を抱える若者にとってのファンタジー」ジョゼと虎と魚たち(2020・アニメ版) グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
閉塞感を抱える若者にとってのファンタジー
多くの映画ファンの心に印象深く刻まれた2003年の実写版から、扱い方を間違えると毒にもなりかねない複雑な感情を上手く浄化して明るく爽やかな青春映画に仕上げたように感じました。
声優を務めた中川さん、清原さんも見事にハマり役で、完成度は文句無し❗️
一方で、世の中のことをよく分からなくても純粋に夢に向かっていく、という選択が、今思えば大らかに許されていた時代のファンタジーのようでもあります。
この30年ばかりで、世界も日本も目先の生産性や効率を重視する『今だけ、金だけ、自分だけ』の経済活動が主流になってしまいました。
結果として、個人に巡ってくるチャンスの割り振りが経済格差をかなり反映する状況が出現しました。
だから、今の若者の一定数の人にとっては、一種のファンタジーとしてしか受け取ることができなかったのではないか。そんな危惧を抱いています。
団塊の世代から50代、40代の大人たち。
今の社会システムを直接間接に作り上げてきた世代の人間が(もちろん、私もその一人です)、若い世代の閉塞感をもっともっと想像しなくてはいけないのではないか。
今、そんなことを考えています。
グレシャムさん、田辺聖子の原作読みました。全く異なる世界でした。市松人形みたいでサディストのジョゼは、村山由佳の『花酔ひ』という小説の登場人物、千桜(京女)にとても似ています。原作読んで良かったです。ありがとうございます!
緊急事態宣言下でもあり、Kindleで原作購入して読みましたが、実写版とおなじく、まったく色褪せてなかったです。
私の中では、あいみょんの『夢追いベンガル』がまるで主題歌のようにピッタリ重なりました。あちらのベンガルはたぶん虎ではなく猫のはずですが😄
田辺聖子さんとあいみょんの言葉選びのセンスの良さが、どこか似ているようにも感じました。どこがどうとはうまく説明できなくてもどかしいのですが、とにかく。