「極私的なテーマを淡々と、淡々と。」血筋 redirさんの映画レビュー(感想・評価)
極私的なテーマを淡々と、淡々と。
アジアンドキュメンタリーズで、かなり厳しい現実を突きつけられるドキュメンタリーを立て続けに観て。少しクッションとなるものが観たくなり、Amazonプライムのドキュメンタリーコーナーで本作品を発見。早速拝見した。血と骨を連想させるタイトル、中国に暮らす朝鮮族、出稼ぎは韓国、そして監督は日本に暮らす大学生、とても興味深い。
大学生の監督、私から見ると主人公さんは、中国の叔父の価値観とも実父の価値観というか言い分とも距離を保ち、言いたい事聞きたい事は素直に話し、許容範囲内で相手の言い分、価値観、押し付けがましい教えを理解したり聞いたりされていて、そのバランス感覚がとても好感、心地よい。父親との別離、母親とも別れ、祖父母との中国での幼少時代、母親と新しい父親との日本行き、祖父母の文革体験など、知識と想像ではわかるがとても実体験された方の苦労や感情はりかいすることができない。それでも、この映画の構成、何度も中国と韓国を訪ね少しずつ事実や心情がわかり、紐解かれ、こじれていく様の描写と構成がとても素直だ。最初のシーン、古い写真でも手紙でもない何かを一生懸命テープで貼り合わせるところから、ミステリアスで、父親の言動の遷移、画家になる夢、映画作りをしている今の息子、絵を描く、絵を破る、絵を貼り合わせる、絵を焼いてしまう、一連のシーンの絡まりが、なんとも、ある意味感情に流されず淡々と付き合うが、なんとも言えない血縁を肯定的にも否定的にも、ニュートラルに感じさせる。父を知ろうとしてか、父を軽蔑する気持ちもあるのか、父の映像を取り尽くしたいのか、カラオケや、高級風俗までお金を出してあげるというて誘いをかける監督。祖父母の暮らしと思いに耳を傾けて心を痛める監督。海の向こうの人たちのことが知りたくて見た作品だが家族、社会、繋がり、人生観、身近な自分のテーマとなりかえってきた、そんな印象。エンドロールにたくさんの協力、サポーターさんのお名前があり、この監督さんのお人柄も感じた。