「もやっとくる作品」スキャンダル movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
もやっとくる作品
なんだろう?もやっとくる作品。
題名からして軽めかなと思ったが、世界的に大きな影響力を持つFOXで活躍する目論みを持つ女性達が、キャスターとして出世していくために、大ボスである男性ロジャーの言葉巧みな誘いに乗り、セクハラと引き換えにキャリアを手に入れていた、という話。
セクハラを断ったせいで不遇な目に遭ったグレッチェンがロジャーを訴えた事で、同じ目に遭った女性や、セクハラに応じてキャリアを得て今も現役として活躍中のシャーリーズセロン演じるメーガン、上昇を狙ってセクハラに応じてしまった新人の子も、当初は事実を明らかにすることを拒むが、声をあげる事を決意する。最終的に、FOX社長一家からクビにされるロジャー。
お金があっても権力があっても、ビジネス的にどれだけ会社に貢献しようと、人が嫌がる事をしたらいつかは自分に返ってくる。
でも、泣き寝入りしていた女性達が声をあげるのは大いに結構なんだが、実際女性達が見返りとして出世を貰っていたのも事実だし、仕事を評価する立場にいるのが男性なら、その男性から見た視線や、視聴者の視線を気にして、評価される動き方をしなければならないのもまた事実。
ロジャーのやり方は確かに間違っていたが、ロジャーが降りるなら、そのやり方に応じた女性陣もまた、得た物を手放さないとフェアでないのでは?一方、家族がいて名声や収入を手放せない中でセクハラの話を断れなかった事情も良くわかる。
何が一番公平な結末なのか?
セクハラとそうでない境界線がお互いに不快でない事なのだとしたら、男女間に限らず普通の同僚とでも、違う意見の者同士がどちらかに無理して合わせたら、NGということになる。余りに窮屈な気もする。
会社や組織がある以上、上下関係は必ず存在する中で、本当にフェアな出世とは?
評価する側もされる側も、人間である以上、主観を取り除くことは難しいし、特に視覚媒体で視聴率が評価となる業界ならば、頭脳や言葉選びだけでなく、どうしたって印象や見た目も視聴率に影響する。脚を見せて視聴率を稼ぐ方針はナシとは言い難いが、脚見せの延長線上にロジャーとの関係もある。どの段階で、不快感を感じるかも女性ひとりひとりによって違ってくる。
男女共生の社会の中で何が正解なのか?
よくわからなくなる作品。
放送業界に限らず、ハリウッドだってビジュアル重視。女優達はどんな感想を抱きながら演じたのかも気になる。
ミステリアスな表情が多いニコールキッドマンが、グレッチェン役では老いを隠さず感情をあらわにしていて、意外だった。