「自分にとって一番良いことを」スキャンダル KinAさんの映画レビュー(感想・評価)
自分にとって一番良いことを
誰もが持つ野心や向上心を、女性だからというだけでどうしてこうも踏みにじることが出来るんだろう。
見ているだけで辛くなってくるセクハラ、暴言、侮辱の言葉。
やんわりとやり過ごすテクニックも媚びたような作り笑顔も覚えたくないのに。
FOXの会長という絶対的な権力者を相手に、傷付き辱められた事実を告発する女性たち。
キャスターの座を下ろされたグレッチェン、良くも悪くも注目のキャスターを務めるメーガン、キャスターになりたいと強く望み行動するケイラ。
三者三様の立場とその想いを絡め、真っ直ぐな視点で描かれた作品。
挑戦的な姿勢をわかりやすく感じる映画だった。
ジャーナリズム的な映像表現からはスリルを感じ、ノンフィクションとフィクションの間を縫う独特のタッチには緊張感がある。
実際のニュース映像を使っていることにも驚く。
メイン3人の中で唯一の創作のキャラクターであるケイラの見せ方がとても良かった。
進行形でセクハラを受ける彼女を追体験している気分になった。
濃いメイクと派手なファッションで上辺を塗り固めて苦しみを仕舞い込んだ姿はどうしても痛々しい。
彼女の涙と言葉がストレートに刺さってくる。
正直、この事件のことをほとんど知らなかった。
知れて良かったと思う。
ただ、どうしてもモヤモヤしてしまう点も。
告発した女性たちがその後どうなったのか。告発しなかった女性たちはどう思っているのか。
もしかしたら、モヤモヤすることで正解なのかもしれない。
一先ずの解決は見せつつただスッキリするだけで終わる映画にはしないことで、問題提起とハラスメントへの意識を持たせる狙いがあるのかも。
万事解決!勧善懲悪!勝利万歳!なんて、現実ではなかなかないもんね。
もし私が直接の被害者になったらどうすれば良いんだろう。
怒りの声を上げるのも傷付いた心を公に訴えるのも、本当に疲れる。
メリットよりデメリットの方が頭に浮かんできて、行動に移すには相当の勇気と労力が要るでしょう。
そんな風に思っている私に、グレッチェンの最後の一言がガツンと響いてきた。
なんて頼もしい人なの。
間違ったことを間違っていると、正しいことを正しいと、そう言える人間になりたい。
うーんでも、過敏にはなりたくない。
SNSでたまに見かける、過敏な人の八つ当たりみたいな怒りにはなかなか同調しがたい。
立場を利用した性的搾取は絶対に最悪だけど、男女問わず人に性的魅力を感じることが全てNGだとは思わない。
やっぱりモヤモヤしてしまうな。時と場合と人によるんだよね。
あとトランプ大統領を本当にどうにかしてほしい。