「自分の身は自分で守る為の勇気の予習と復習。」スキャンダル マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の身は自分で守る為の勇気の予習と復習。
予告編を何度も見て、なんとなく面白そうと思って、なんとなく鑑賞しましたw
で、感想はと言うと、結構面白いです。
ニコール・キッドマン、シャーリーズ・セロン、マーゴット・ロビーと豪華なキャストの共演に今年のアカデミー賞でカズ・ヒロさんがメイクアップ&スタイリング賞を受賞した事で話題は豊富。
実際に起こったテレビ局でのセクハラ問題をテーマと言うのも申し分無し。
ですが、のっけからテンポが良すぎると言うか、メチャクチャハイスピードで進んでいくから、メインどころの把握や人物関係が把握しきれないとちょっと追い付いていけない感じ。
中盤ぐらいからある程度の流れが掴めるんですが、それまでが大変でしたw
鑑賞前にそれなり前情報が入っても大丈夫な人は人物関係図とだいたいの流れを予習しておく方が良いかもです。
女性キャスターが局をクビになり、勤めていた会社のボスをセクハラで訴え、それに同調する女性たちが賛同していくと言うのが簡単なストーリー説明。
アメリカに限らずですが、企業のヒエラルキーに存在するパワハラとセクハラ問題を描いていて、訴えた相手が大き過ぎて、そこに立ち向かっていくと言うのは痛快なんですが、難点が無い訳でもない。
個人的に思ったのは、グレッチェン = ニコール・キッドマン、メーガン = シャーリーズ・セロン、ケイラ = マーゴット・ロビーの誰が主役なのかがちょっと分かり難かった。
3人が3人とも主役で、強いて言うならばグレッチェンなのかとは思いますが、ちょっと分かり難い。
この辺りのさじ加減の配分も満遍なくにし過ぎているのがマイナスになっている感じがします。
良いのは適度に生々しく重々しくない事。
セクハラ・パワハラと言った重い問題に訴訟と言うのは我が身で考えるとゲンナリして胃が痛くなる感じ。
訴えた側、訴えられた側のどちらに立場になっても胃が痛いw
訴訟王国アメリカはその辺りのフットワークが軽いのか、サクサクっと訴えて、訴えられた側もサクサクっと対応する。日常茶飯事ぐらいな感覚。
日本じゃこうはいかんね。
でも、それがそれほど重々しく見せてない感じなので、アメリカのメディアビジネスの華やかさを失ってないんですよね。
さぁこれからが裁判だ!となるかと思えば、グレッチェンのセクハラに関する会話の録音が提出されてあっさり勝ち。
裁判に行くまでにロジャーが白旗を上げて敗北。
この辺りの件りもあっさりと言えば、あっさりなんですが、テンポが損ねてないので良いのではないかなと。
面白いのはそれぞれの立場でセクハラ・パワハラ問題に立ち向かっている女性達。
「自分の会社のボスを訴えるなんてとんでもない。ボスの味方です!」と言うのも分かるし、「それとこれとは別問題。セクハラされたら倍返しだ!」と言うのも分かる。
そこにLGBT問題や覇権争いの交代劇も真しなやかに絡ませてるのが面白い。でもちょっと絡ませ過ぎかなと思わなくもない(どっちやねんw)
凄いのは、現役の大統領も当時の映像を使ってになりますが、登場させている事。
それぞれの支持派があると思いますが、どう見てもトランプ大統領は悪い奴で調子の良い奴なイメージしか見えない。
現役の大統領をこうもこき下ろすか?と言うのとこうもストレートに政治的思想も入れられると逆に清々しい感じがしますw
これも日本ではこうはいかんね。
FOXチャンネルのCEO、ロジャー・エイルズが良い感じで悪ボスぽくって憎らしい。でも愛嬌もある感じ。
セクハラ・パワハラ大王でそれが日常茶飯事と言う事で劇中にもあった「魚は頭から腐る」と言う言葉通りとそれが会社の体質になりつつあって、「腐ってるなぁ」と思っても、それが巨大企業でそれが権力者と言う感じがする。
実際のロジャー・エイルズは2017年に亡くなってますが、トランプ大統領のパーソナル・アドバイザーにもなっており、FOXニュースを退任後もそれなりの立場についているのにも関わらず、この扱い。
描かれた人物達はそれぞれの思いがあるかと思いますが、トランプ大統領は現役で存命なので、こう描かれる事にいろんな思いがあるにしても、映画に使われるのをオッケーとしたのはなんとなく懐が深い感じはしますw
また、マーゴット・ロビーの破竹の活躍もなんか嬉しい。
ハーレイ・クインで大当たりしたマーゴット・ロビーがニコール・キッドマン、シャーリーズ・セロンと肩を並べているのもなんか凄いしw
「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」の公開も控えているだけにマーゴット・ロビーが気になるんですよね。
日本でもセクハラ・パワハラに代表される様々なハラスメント問題は取りざたされてますが、アメリカではより深刻かつ根深く根付いた問題に感じますが、日本でもニュース等で取り上げられたのは氷山の一角かと思います。
だからこそ、対岸の火事と捉えずに明日は我が身と考え、知識が必要。
企業に殉じる事が美徳とされる、日本ではまだまだ裁判事を起こすと言うのはアンタッチャブルに感じられますが、自分の身は自分自身で守る勇気と決意は持っとくに越した事は無い訳で、それをエンターテイメントに教えてくれる作品かと思います。
美しい事が武器になる世の中は大小のハラスメントが存在していて、そこにつけこむ輩も出てくる。
華やかなメディア・ビジネスの裏側を描いていますが女性達の自立と葛藤、戦いも描いています。
結構硬派な作品でお薦めですが、テンポが早いので確りと付いていく事が大事ですw