「Cセロンの顔、忘れたンゴ。」スキャンダル bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
Cセロンの顔、忘れたンゴ。
ちょと待て。シャーリーズ・セロンて、こんな顔やったかいな?何とかンゴの時と別人すぎひん?と戸惑ってるうちに、怒涛の早口字幕に追われる冒頭部。早いって、早口過ぎるってw もう字幕から目が離せへんやん!でも気が利いてて楽しい。と言うか辛辣な語りのアンカーが知的でカッコ良い。
原題"Bombshell"は、俗語で「オネイチャン」とか「可愛こちゃん」とかの意味。要するに、男性優位社会の男性が、女性を侮蔑的に呼ぶ言葉。これ、フェミニスト的立場から言ってみました。だからテーマは、セクハラ・スキャンダルそのものじゃ無くて、女性の社会的地位の問題。もっと細かく言うと、性的対象としか見られていない現実へのオブジェクション。
事件は、ルパード・マードックが、体良くロジャー・エイルズをFOXから追い出す物語だったりします。訴訟に走ったグレッチェンには、マードックがどう動くって言う予測は、当然あったと思われ、描写は無いけど。時間を掛けて復讐劇を準備したグレッチェンの戦略は、もっと強調してくれた方が、カッコ良いんちゃうかと思いました。
ポップな映像表現で幕開けし、重々しさを避け、畳み掛ける様なスピードで進行する物語りは、女子三人の内心描写部分だけ速度を緩めます。この緩急が好きだし、笑える前半がジェイ・ローチらしくて良いと思いました。
何にしてもですよ。セロンですよ、特殊メイクなんですってよコレ。鼻の形、違うし、顔も細長くなってる気がするし。いや、コッチんが美人やん!
マーゴットはスタイルが良いと言うより、ガタイが良いw ハーレイクインでの大暴れが楽しみです。
あと。
アメリカの世相、政治、訴訟大国におけるセクハラ訴訟の実態と企業の対応、などなどの知識は、あった方が良い。って言うか必須じゃ無いかと。レズがFOXでヒラリー支持。彼女が他人を助けない描写。共和党支持者だけで無く、民主党支持者も、緩く皮肉ってます。露骨に非難はしないけど、両方ともに日和らないスタンスがリベラルだよねぇ、と思いながら帰宅して来ました。
面白かった。予想よりかなり。
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2/25
訴訟大国アメリカにおける各種訴訟の実態は、この映画を理解するために必須かと思われますので、追記します。
◆2006年の北米トヨタの事例
手っ取り早く言うと、「大企業を相手取ったセクハラや企業責任を問う訴訟は確実に勝てる」です。企業側の立場からは、裁判になれば敗訴は濃厚なため、一定の和解金を支払うと言う合理的な判断を下し、実行します。
2006年5月の北米トヨタの事例です。社長アシスタントの女性が、社長である大高氏から、出張先のホテルの部屋などで体を触られたとし、「北米トヨタ」と「トヨタ自動車」を相手取り、経歴毀損に対し$4,000万ドルの補償を、懲罰的損害賠償として$1億5,000万ドル、合計$1億9,000万ドルの支払いを求めて訴えを起こしました。陪審員裁判では勝ち目がないと見たトヨタ側は、同年内に和解を成立させます。和解金額は公表されていませんが、1/10~3/10程度と想像します。これ、PL訴訟の和解金額を元にした、あくまでも想像です。
◆有り余っている弁護士と訴訟戦略
ものすごく乱暴に言うと、司法試験合格率の高いアメリカには弁護士が溢れています。最も弁護士の多い州はカリフォルニアで、人口230人に対して1人の割合。日本は、3400人に対して1人。ざっくりした統計ですけど。これが訴訟大国と言われる背景。企業を相手取った裁判を専門にする弁護士も弁護士事務所も吐いて捨てるほどおり、「自動車業界専門」「フェミニスト専門」「一般人権問題専門」「企業賠償全般」などなど、多彩です。もちろん「離婚したい女性専門」も。
「企業賠償専門」の弁護士の基本的な戦略は、訴える企業が「如何に悪辣で金に汚いか」だったり、「違法な事を平気で行い、金儲けをしているか」を陪審員に訴えます。公訴内容そっちのけでプレゼンテーション。よって、「儲かっていると思われている企業」、「一度大きな不祥事を起こした企業」などは、訴えられればOUT。裁判で負けて言い値の賠償金を支払うよりも、低めの金額で和解した方が得、と言う合理的な判断に従います。
で。そうした訴訟で大金を手にするとですね、お前こそ金の亡者だの、不幸をネタにしたマフィア、だのと言われたりすることも多々ある訳で。和解金を手にしても、その金額は決して公表しないのも、当然と思います。
◆グレッチェンは何故個人を相手取り訴訟を起こしたのか
ココがね。彼女の賢さであり、強かさであると思う訳で。
FOXと言う企業相手のセクハラ訴訟と来れば、訴えた時点で勝ちも同然。しかも、録音データと言う証拠がある。でも、有名人であるだけに、「金目当て」とバッシングを受けるのはイヤダ。そこで個人を相手にすることにした。加害者は彼個人である。会社が、名誉と言う名の「世間体」と、企業価値と考えている「株価」を守るために支払ってくれる「賠償金」が目当てでは無い。個人の罪を告発したいだけなのだ、と、言い訳できる。そっちの方が聞こえが良いし、賛同も得られるでしょ?ってなる。
賢い。
しかも彼女には読みがあった。社長を訴えれば、彼は辞めざるを得なくなる。なぜならば、マードック一家が、彼を追い出したいと考えているから。メディア王と呼ばれているルパード・マードックは、インテリ・イメージを欲しがっており、CEO就任の野心を持っているに違いない。だから、マードックが和解に乗り出してくると。
賢い、やっぱり。と言うか、人生賭けた「ギャンブル」は、この点だったんじゃないでしょうか。泥を被り、好奇の目に自らを晒す勇気の原動力は、プライドであり、子供達との生活のためであり。多分。
FOX社内の女子社員に、同様の問題が無いかの聞き取りをしてたのは、別の弁護士事務所。専門ですよね、おそらく。グレッチェンに追従するものが出てくれば、焦るマードックが提示してくる和解金額も吊り上がる。最初の1人が裁判まで持ち込めば、追従するものとの和解も困難になるから。グレッチェンに支払われた和解金は$2,000万ドルって事でしたが、事実はどうなんだか?って思いました。
戦略練って準備して行動に移したグレッチェンって賢いし、強か。結果、しっかりと復讐も果たしたし、大金も手に入れた。映画の中でも、ここら辺をしっかり描写した方がカッコ良かったと思う。少なくとも「勝つか負けるかの裁判」じゃない事は確かだったでしょうから。
マーゴット、ガタイいいですね。私はまだついていけます。レズの女性が、私を巻き込まないで、的なことを言ってた場面、ハッとしました。日本だとあんな風に仲良くなったら、ピシッと線を引けない気がする。
YukichifromJPNさんへ
マーゴット→スキャンダルと言う邦題の流れにアホか?と思いつつ。俺はマーゴット好きなんですが、なんか最近ガタイ良すぎて、結構引いてますw
マードックはオーストラリアから来たのにイタリアンマフィアのようにみえました。キッドマンもマーゴットもオーストラリアで生まれたか育ったかしてるし、その辺何やら関連があるんでしょうか。