スキャンダルのレビュー・感想・評価
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のろしを上げる者の覚悟とリアル
実話をベースにした映画には、元の出来事や登場人物をどれだけ知っているかで面白味が左右されるものがある。当時の報道で訴訟の顛末自体は大まかに知っていたが、FOXニュースの元々の報道姿勢やモデルの人物の顔立ちはあまり知らないまま見た。
カズ・ヒロ氏がオスカーを獲得したことで、実在の人物に寄せるため特殊メイクが用いられていることが話題になったが、ELLE JAPANの記事によると主役の3人以外も実在の人物はことごとく風貌を寄せてある。こちらは特殊メイクかそっくりさんかは知らないが。アメリカではこの寄せ具合が実感出来る分、この作品の楽しみ方が少し違うものになっているのだろうと思うと何となくもどかしい思いがした。
予告映像で3人がエレベーターに乗り合わせる場面が流されたせいか、もっと共闘するイメージがあったが、互いの行動に感化されたりする場面はあるものの、実際はほとんど三者三様の行動を取っている。また、同じ社内の女性達でも、異論を唱えることへの恐怖から沈黙する者、テレビ界の帝王に隷従することで得られる地位を重視する者、家族や生活を一番に守りたい者と様々だ。これらの描写でむしろセクハラの構造の根深さ、「ファーストペンギン」となって問題と対峙することに要する途方もない勇気とエネルギーを想像することが出来た。
決着の仕方から考えて何故映画化されてるのかと思ったら、町山智浩氏によると映画制作にあたり登場する実在の当事者の許可は取っておらず、訴訟上等で作っているそうな。本当だったらアメリカすごいな。
追記 映画の感想を自分のイデオロギーの表明文にしてしまうタイプの作品で、「映画の」レビューとは何だろうと(勝手に)考えさせられた。そんなの自由でいいんだけど。
Interestingly Modern Political Workplace Hybrid
I'm surprised that Austin Powers is the demo reel for Jay Roach's matured craft in cinema, first having struck a core moment in American history with Trumbo, and now this current events tale of the Fox News scandal. A realistic period piece of the 2016 election. It believes in its own story, though it probably won't convince anybody they're on the wrong side. The face prosthetics are unnecessary.
そっくりメイクはすごいが、人物を好きになれない
FOXニュースの看板キャスター、メーガン・ケリーを演じたシャーリーズ・セロンの特殊メイクは、担当したカズ・ヒロの2度目のメイクアップ&スタイリング賞受賞でも大いに話題になった。ただ日本ではそれほど有名でもないので、写真と見比べて確かによく似ていると感心はするものの、ゲイリー・オールドマンをチャーチルに変身させた時ほどのインパクトはない。
それにしてもこのメーガン・ケリーという人物、上昇志向が強く計算高い女性で、どうも好きになれない。グレッチェン(ニコール・キッドマン)が提訴した後、同じ女性としての連帯や共感よりも、自身のキャリアにどう影響するかを優先して態度を保留する。映画では描かれないが、2018年には人種差別的な発言をして、司会を務める番組が打ち切られた。
大企業でのセクハラ問題を正面から描いた点で、啓発的な意義は大いに認められる。差別やハラスメントを減らす一助になることを願う。
セックスシンボル
2024年2月28日
映画 #スキャンダル (2019年)鑑賞
アメリカ保守系ニュース専門放送局“FOXニュース”の創立者で元CEOのセクハラ事件の実録ドラマ
やりたい放題おじいさんを演じてたのは、#ジョン・リスゴー って気づかなかった
#カズ・ヒロ のメイクすごいな
誰が1番ギャラが高かったのかな?
おもてに出ないのは理由があって
FOXNEWSの裏側を見せる話。
ジャニー問題、松本人志問題を
合わせたような内容。
会社内でも派閥やらなんやらで
日本みたいに染まらないとやっていけない。
これぞメディア王の所業。
アメリカという大国にもなると
メディア1つとっても覚悟いる
現場に置かれているのがわかる。
トランプの煽りセンスがずば抜けている。
日本でも社会に対する女性への
立ち位置が問題になっているが
海外も同じ問題を抱えている。
向こうの方がセクハラ対策(加害者の)
がうまいと感心させられる。
直に言わず、匂わす言い方。
秘密保持、強制的仲裁条項の契約で
会社からも周りからも批判をあびる。
個人の被害よりも会社の利益に
重きを置くアメリカらしい考え方。
SNSやメディアで被害を訴えられる
日本の方が幸せかもね。
ケバいお姉さん方が好きな人には
たまらん。
そういえば、アフリカ系のキャスターって、FOXニュースにはいなかったのかな?
アメリカ最大のケーブルテレビ局FOXニュース。その経営者のセクハラを訴えた女性キャスター達の苦悩を描く物語。
アメリカでは有名なセクハラ問題だったようですね。その顛末を、ややドキュメンタリー色を交えて描いています。
当然のようにセクハラをするCEO。それに戸惑い屈辱を感じながらも成功を夢見て甘んじる女性達。それを見て見ぬ振りをする周囲。今、日本でおきているジャニーズ問題にしてもそうですが、声を挙げることの難しさと重要さをまざまざと見せつけてくれました。
主人公は女性3人。彼女達のキャラクターを掘り下げることはせずに、淡々と描写されていきます。それはリアルにも感じられますし、感情移入し難い部分でもあります。アメリカでは著名な方々のお話でしょうから、それでも十分なのかもしれませんが、彼女達の予備知識を持たない私としては少しだけ物足りなく感じました。
私的評価は4にしました。
どの国も同じだなぁ
このネタが映画になって話題になることがそもそもどうなのか。権力のある男性が女性を性的に蹂躙するという、最低の行為がずっと当たり前にあったんだと実感する。
ようやく声をあげられるようになったことは、大きな進歩なのだろう。
そういう意味で,それを映画として世の中に事実を突きつけたことが,この映画の意義かもしれない。
会社のトップをセクハラで訴えるのは米国の女性でも簡単なことではない...
会社のトップをセクハラで訴えるのは米国の女性でも簡単なことではない。
社内で孤立し、退職に追い込まれ、社会的にも叩かれるという踏んだり蹴ったりの状況に陥るが、会長の言葉を録音していたことが決め手となった。
終盤の巻き返しは爽快だ。
改めるべき現実に対して創作物が持つ力
これは「米国のセクハラ問題」という個別具体の話ではない。
セクシャルハラスメントはパワーハラスメントつまり「優位性を利用し便宜を強要する又は苦痛を与える」に包含される事をこの映画は明示する。
どちらも耐えてやり過ごす事が多いが立ち向かう人もいる。
それがどういう事かについての普遍的な物語である。
この映画の何がすごいって、演技も含めたルックの構築が素晴らしい。
ルックの構築には実在の人物に似てるかどうかは本質的には関係なく、どれだけ外部に対して人物造形・キャラクターに関する情報を発信できているかが重要である。
見た目を似せるというのは、手段ないしは只の結果であり目的ではない。
シャーリーズセロンの完成された強さと合わせて完成する前の佇まいも素晴らしいし、同等の貫禄を出せるにも関わらずどこか垢抜けきらない役を演じきるニコールキッドマンも秀逸。
そして行く行くは前述の2人と同格になる可能性を感じさせ、2人が通ってきた道を現在進行形で見せるマーゴットロビーも役割を全うしている。
人間は皆弱い。
常に立場は相対的で、常に誰もがパワーの差を利用した加害者になり得るし被害者にもなり得る。
それは双方自覚的ではない場合もある。
この映画の中で象徴的なのは、セクハラで訴えている側が他方では忠誠心を強要しようとする場面だ。
作り手側は間違いなく意図的にやっている。
人間本来の弱さでなく、男か女かどんな人種かどんな属性かという話にして、属人的な物語にしまっては対立を繰り返すだけだ。
必要なのは勇気を持って声を上げ続ける事、加害者の人格だけでなくシステムを攻撃すべく声を上げ続ける事である。
人間は弱さと同時に強さも持っているのだから。
それぞれ守るべきものがあり声を上げる事は本当に難しいが、同時に守るべきものの為に強くもなれる。
どんな時に我々が奮い立つのかをこの映画は短いが2度同じ表現を使って明確に意思表示している。
改めるべき現実に対して創作物が持つ力、果たすべき役割を信じさせてくれる作品だった。
池上さん 教えて
FOXのキャスターが社長をセクハラで訴えるという話の大筋はわかりますが、多数の女性がドンドン出てきて、それぞれがどういう立場でどういう役割なのか混乱します。
事件当時、アメリカでは連日ワイドショー的に報道されていただろうからアメリカ人はサクサクわかるんでしょうが、他国人には無理ですね。まあ、国内向けだろうから他国人が文句言ってもしょうがないですけど。
社長を追い詰めていく過程も、メリハリがなく何となく進んでいく印象で、パンチの効いた演出が必要です。
共和党、トランプとの関連もサッパリわかりません。アメリカ人には常識なんでしょうね。
類似作品ではShe saidの方がわかり易くてストレートで、遥かに上です。
局内セクハラの顛末
シャーリーズセロン扮するフォックスニュース看板キャスターメーガンケリーはついつい言い過ぎてトランプはカンカンだった。メーガンはトランプを女性で攻めようとしていた。
シャーリーズセロンはいつ観てもセクシーで魅力的だ。こんな美人がキャスターとして登場したら視聴率はうなぎ登りさ。今回のテーマは、女性キャスターをめぐる局内セクハラだが、仕事とセクハラとどちらが勝つかな。
なんだかモヤっとする
キャスターは美貌と才知で前面に出る仕事で、だからこそ被害に遭いやすいが、内勤や裏方だとセクハラに遭う率は低い。元ミス・アメリカで、看板番組を持ってたグレッチェンが、セクハラ上司エイルズを訴えても、社内の女性たちは、あまり味方になってくれない。保身だかやっかみだか、セクハラ上司の味方に付く人もいる。たぶん、「あの女、散々いい思いしてたくせに」とか、カゲ口言われてたかもしれない。まさに女の敵は女か。
最終的に勝訴できたのは良かったけど、卑劣なヘンタイおやじをこてんぱんにやっつける、爽快な話にして欲しかった。勧善懲悪バンザイ。
BSフジの放送を録画で鑑賞。
名だたる女優陣は観応えあり
女優陣の演技は迫力ありで良かったが、映像がテレビドラマっぽくて、ストーリーまで2時間ドラマっぽく感じてしまった。
また、屋内のシーンが多かったこともあり、全体的にチープな印象で、期待外れだったかな。
主演女優シャーリーズ・セロンのカッコ良さと権力者と闘いを描く脚本の面白さ
ジェイ・ローチ(トランボ ハリウッドに最も嫌われた男等)監督による2019年製作のカナダ・アメリカ合作映画。原題:Bombshell、配給:ギャガ。
アトミック・ブロンド(2017年製作)の後にこの映画を見たので、シャーリーズ・セロンの演技の幅の大きさ(実在のキャスター・メーガン・ケリーに似せたメーキャップと演技らしい)に、圧倒されてしまった。彼女、製作者でもあるが、一作一作チャレンジする姿勢が何ともカッコいいい。
「FOXニュース」のメーガン・ケリー、グレッチェン・カールソン、ロジャー・エイルス、ルパート・マードックとトランプ大統領などは、実在の人物。そこに、マーゴット・ロビー演ずるケイラといった架空の人物を加えて、組織内権力者と勇気を出して頭脳で闘う女性たちを、事実を土台に膨らまして描いたチャールズ・ランドルフによる脚本が素晴らしいと思った。強力な権力者を相手に弱き者達が闘いに勝つ物語に爽快感も感じた。
主役たちと対照的に上昇志向は乏しくFOXニュースに勤めながらクリントンを実は応援している普通の女性社員、ケイト・マッキノン演ずるジェス・カーを、ケイラ(マーゴット・ロビー)の友人として設定しているのに、感心させられた。目立たぬように慎重に生きる彼女の姿勢に、リアリティと共感を覚えた。
セクハラを訴えた社員が出た後に名乗り出るのを躊躇したメーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)、更に追随を非難する周りの人達の姿にリアリティを感じた。グレッチェンがFOX側と和解に応じたこの事件を、映画で再び掘り起こす米国映画人の問題意識に感銘を覚えた。残念ながら、日本では類似事件は殆ど報道も無く、企業内のセクハラ糾弾はもっと困難かもとも。有名なジャニーズ事務所のあの方も、セクハラ行為を本などで書かれたが、結局大きな問題にされなかったし。
制作アーロン・L・ギルバート、ジェイ・ローチ、ロバート・グラフ、ミシェル・グラハム チャールズ・ランドルフ、マーガレット・ライリー、シャーリーズ・セロン、ベス・コノ A・J・ディックス、製作総指揮ミーガン・エリソン、ジェイソン・クロス、リチャード・マコーネル、脚本チャールズ・ランドルフ(マネー・ショート 華麗なる大逆転等)。
撮影バリー・アクロイド、美術マーク・リッカー、衣装コリーン・アトウッド、
編集ジョン・ポール、音楽セオドア・シャピロ、音楽監修エブイェン・クリーン
特殊メイク(シャーリーズ・セロン)カズ・ヒロ
出演は、シャーリーズ・セロン(メーガン・ケリー)、ニコール・キッドマン(グレッチェン・カールソン)、マーゴット・ロビー(ケイラ・ポスピシル、ドリームランド等)、
ジョン・リスゴー(ロジャー・エイルズ)、ケイト・マッキノン(ジェス・カー)、コニー・ブリットン、マルコム・マクダウェル(ルパート・マードック)、アリソン・ジャネイ。
セクハラ訴訟
FOXの実際におきたセクハラ訴訟が題材ですが、
全体像を知らないので展開の速さについて行きづらい部分がありました。
セクハラ本人としとては全く悪いと思っていないのが、言動からわかりますし、こういう人が多いと会社も変わらないし、社会も変わらないのだろと感じました。
出演者は、豪華でかなり見応えはありました。
元始、女性は実に太陽であった…。 いつまでも月が黙っていると思うなよ!
2016年に行われた、FOXニュース創始者でCEOのロジャー・エイルズに対するセクハラ告発を取り扱った、史実を基にしたサスペンス・ドラマ。
FOXニュースの人気キャスター、メーガン・ケリーを演じるのは『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『ワイルド・スピード ICE BLEAK』の、オスカー女優シャーリーズ・セロン。なおセロンは本作の製作も担当している。
ロジャー・エイルズを告発したFOXニュースのキャスター、グレッチェン・カールソンを演じるのは『LION ライオン 25年目のただいま』『アクアマン』の、レジェンド女優ニコール・キッドマン。
野心的な若手テレビマン、ケイラ・ポスピシルを演じるのは『アバウト・タイム 愛おしい時間について』『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー。
第92回 アカデミー賞においてメイク・ヘアスタイリング賞を受賞!
第73回 英国アカデミー賞においてメイクアップ&ヘア賞を受賞!
原題は『Bombshell』。爆弾という意味。
転じて、衝撃的なニュースや悩殺美女という意味も持っている。
この原題は「衝撃ニュース」と「悩殺美女」のダブル・ミーニングになっており、まさに本作の内容にピッタリである。
これを無視して『スキャンダル』という邦題にするというのは、あまりにも安直すぎやしませんか?
ハリウッドTOP3とも言うべきトップスター女優が共演。
常にフェミニズムを訴えるような作品を作り続けているシャーリーズ・セロンらしい、ウーマン・リブを真正面から描いた映画である。
「FOXニュースのセクハラ騒動を取り扱った映画」と聞くと、我々日本人には縁遠い作品であるかのように思われるだろう。
しかし、本作で描かれているのは非常に普遍的なジェンダー問題であり、日本人の女性にも大いに共感できるところがあると思う。
更に言えば、本作で描かれているのは強大な権力を持つことにより起こる人間性の堕落、そのような権力者に従属することにより起こる組織の歪み、そしてそのような組織の中で働かざるを得ない人々の苦しみ。
日本の労働環境のことを考えれば、この映画で描かれていることは正に我々が考えなければならないことそのものである。
驚かされるのは、本作が2019年に公開されているということ。
セクハラ騒動から僅か3年しか経っていないのである。
「鉄は熱いうちに打て」というが、このスピードは凄まじい。
また、テレビ局の不祥事を映画に出来ると言うところに、アメリカの表現に対する懐の広さを感じられる。
日本じゃ絶対に無理だろう。
事実をベースにした映画と言うこともあり、かなり淡々と物語が進んでいく。
そのため見せ場が少なく、再現VTRを観ているような感覚に陥ることも多々あった。
しかし、名女優3人の演技力がドラマ的な起伏の乏しさをカバーしてくれている。
特に素晴らしかったのはマーゴット・ロビー。
彼女がロジャーからセクハラを受けるシーン。
始めは戯けた態度で乗り切ろうとするのだが、徐々に自分がどのような状況に身を置いているのかを悟っていく。
この地獄のような緊張感を身振りと表情だけで表現するという、アカデミー賞級の演技力を見せてくれました👏
アカデミー賞を受賞した特殊メイクはたしかに見事。
本物のメーガン・ケリーに寄せるため、シャーリーズ・セロンの頬や鼻などを色々と弄ったらしいが、全く違和感が無かった。凄い技術だと思います。
…が、そもそもメーガン・ケリーに顔を寄せる必要ってあったのか?そっくりさんコンテストじゃないんだから、別に素顔でも良かったような気がするんですけど。
強大な権力だろうと、信念のためには立ち向かっていかなければならない。
強いものの言いなりになって、自分を殺してはならない。
こういった確固たるメッセージがこもった力作。
職場環境に不満がある人におすすめです!!
…保守派はスシすら目の敵にするのか…。
民主党員と共和党員の対立ってなんか凄まじい。
とはいえ、アメリカの政治意識の高さは日本も少しは見習うべき。
投票率低すぎんだよ!
※本作でオスカーを受賞したメイクアップ・アーティストのカズ・ヒロ。
彼の受賞を「同じ日本人として誇らしい!」とかいっている人結構いますけど、彼はアメリカ人ですよ。
「日本人」というカテゴリーに嵌められて賛美されることを嫌い、日本籍を捨ててアメリカ人となったカズ・ヒロ氏。
「同じ日本人として云々」という賛美は、彼を侮辱する行為。民族という意識を捨てて、ただ彼の技術力を褒め称えてあげませんか?
キャリアの分岐点の3人が同じエレベーターに!
セクハラに限らず、パワハラにしろマタハラにしろ、特有の立場をめぐる嫌がらせは後を絶たない。それを映画にして娯楽性が生まれるのかどうか、少しの疑問と期待を抱き、映画館へ。見終わった感想は嫌悪感の共有と、軽い勝利、そして彼女たちに深い同情と、わずかの後悔という複雑さだった。
金にものを言わせて、周囲を自分の意のままに操るなんて許されない。狭義のテーマとしてはストレートにそう伝わってくる主張が、もっと深いところで人により受け取り方が違ってくる。そのことがよく考えられた脚本に、俳優たちの志の高さがバチバチとぶつかり合うようなセリフの応酬。一瞬でも自分が彼の業界に身を置いたような錯覚に陥り、彼女たちに同情し、嫉妬し、怒りが収まったような、収まらないような気分だ。
まあ、いろんなことを感じる映画だと思う。
たまたま美人に生まれついた女性は、自分を磨き上げ勉強しているうちに、足の綺麗さや上司に気に入られる術を身に着け、歴代の先輩たちが築いてきたやり方を自然に踏襲する。ちょうどキャリアの分岐点にある女性が一台のエレベーターで鉢合わせになるシーンは女優それぞれと重なって強烈なヴィジュアルを突きつける。
女優としてやや下り坂のニコール・キッドマンは、ナチュラルメイクで汗染みの浮かんだTシャツ姿をおそらく映画で初めて見せたんじゃなかろうか。役柄にぴったりはまっている。マーゴット・ロビーは主演作も控え、日の出の勢いの大活躍。もちろん才能に裏打ちされて今の人気を勝ち取ったものだが、そこに至るまでにそれなりの理不尽な要求に耐えてきたことが伺える表情は、女優魂みたいなものを感じさせる。
そして、シャーリーズ・セロン。プロデューサーも兼ねる彼女は一段上からこの映画を調整して回っている。いろんな人に気を遣う立場から、きっと学んだことを生かしてこの役に投入している。その3人がそのままの立場でエレベーターに乗り合わせるのだ。これは予告編で見たときからただ事ではない雰囲気が伝わってきた。
見ごたえのあるいい映画だったと思う。
最後に、特殊メイクについて。アカデミーをまたしても席巻したカズ・ヒロには、ワタシは何の感動もない。むしろ彼女の顔が変わってしまって、わずかにしぐさや姿勢でのみセロンを認識できるほどの出来栄えにがっかりした。遊園地の着ぐるみの中に、仮に超のつく有名人が入っていたとして、「今日のガーフィーは、特別キレがあったね」なんて評価はしても、「誰が入ってたの?」なんて思う人はいないからだ。
『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で、大好きなゲイリー・オールドマンの変わり果てた姿に落胆した。別の俳優が演じたほうが良かった。原型が残っていないほど、オールドマンのにおいが消えていた。『バイス』では、クリスチャン・ベールが太って、髪を抜いてまでチェイニー副大統領そっくりに変身し、これまた各映画賞を総なめ。(まあ、カズ・ヒロの仕事ではないが)実は、その外見はコメディアンのチェビー・チェイスの現在の姿にそっくりなのだ。どうして彼にオファーしなかったのか。
話が逸れてしまったが、ロジャー・エイルズを演じたジョン・リスゴーは俳優としてのキャリアは確固たるもの。原型を残しつつ主に憎たらしさと嫌悪のキャラクターを演じきった。ルパート・マードックを演じたマルコム・マクダウェルも重鎮。この二人は実在の人物を演じているが、しっかり自分のにおいを残している。写真を見比べてみても、全然似ていない。
俳優が、原型の残らないメイクを施していくら怪演したとて、評価されること自体が異常なのだ。かつてダース・ベイダーを演じたデビッド・プラウズはその声も、顔も映画には残していない。ジョージ・ルーカスによってそのにおいを消されてしまった俳優の一人だ。しかし、彼がフォースを使って離れた人物の首を締めあげる演技は誰のものでもない。彼自身のパフォーマンスだ。全く評価されていないが。
なのでシャーリーズ・セロンの特殊メイクには実はがっかりした。アカデミーの壇上でトム・ハンクスが彼女の変身ぶりをジョークのネタにしたほどだから、俳優たちにもいろいろと思惑があったはず。彼女のキャリアと立場と人気があって初めて出来る裏ワザに過ぎない。
2020.2.24
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