「私の映画観が古いのかな。」ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち パンナコッタさんの映画レビュー(感想・評価)
私の映画観が古いのかな。
『るろうに剣心』最終章2本は私の想像を遥かに超える素晴らしい映画だったが、
この映画は想像を満たしてくれるモノではなかった。
ここのコメントを読んでこの映画を見るハードルが上がっていたせいかも知れませんが。
テレビドラマみたいだった。
脚本に深さがない。楽しくない。監督に一本スジの通った映画観が無い。面白くない。
冒頭、リレハンメル五輪後の記者会見で、『メダルを挙げてください!』と言われた時、原田が泣き出してしまう。その時西方が、
『泣くな原田。お前がいなかったらこの銀も取れなかったと俺は思ってる』
と声をかける。
このセリフを聞いた時、これは期待できる映画かもと思ったが、そこ止まり。あとは下り坂。
オフの人々の声の入れ方も悪い。
「残念だったねー」「原田が悪いんだよ」
「オリンピックまで一緒に頑張りましょう」
「いつまでテストジャンプやってんだよー」「寒くなって来たからもう帰ろうよ」etc.
画面全体に緊張感の無さが漂ってる。
一番最悪なセリフは後半のクライマックス。
吹雪で中断するスキージャンプ。このままだと日本は4位。金どころかメダルにも手が届かない。2本目をやって逆転しなければ…。
審判団は、テストジャンパー達全員がジャンプを成功させられるようであれば競技は続行し、2本目のジャンプを行う、と判断を下す。
テストジャンパー達がは、「よし!俺たちの出番だ」とジャンプ台に向かう。その時、待機デッキで待機していた日本代表4人の中の誰かが、
「頼む!俺たちの金は君たちにかかってる!」と声をかける。
誰が言ったとかではなく、問題は、よくこんな無責任なセリフを吐かせたなと、脚本の陳腐さに呆れてしまった。
これに似たようなセリフは随所に出て来るが、
このセリフは最悪。
例えば、
「皆んな、ありがとう」「無事に飛んでくれ。あとは俺たちが頑張るから!」
とかなら分かる。
俺たちの金は君たちにかかってる、だと?
ふざけるなー!なんと驕り高ぶった言葉!
この映画の『魂』に一番相応しく無いセリフ。
監督、プロデューサー含め製作者の中の誰一人そこに気づかないとは。誰もこの映画を愛していないんじゃないかと思う。
ドラマのTBSが付いてて何をやってるんだ!
役者達は皆んなちゃんとやってて、良かったと思うが、制作陣には緊張感が無さ過ぎてあきれる。
長野五輪のテストジャンパーの中に女の子のジャンパーが本当に1人だけいたのかなー?
「女子のスキージャンプがいずれ五輪競技になるのを夢見てる。その第一歩がこのテストジャンパーなんです」
と、その女の子が西方に語る。雪のベンチでのワンシーン。
あのシーンもセリフも良かったと思った。
フィクションならあの女の子の描き方がすごく中途半端。西方にかなり影響を与えている役なのに、見ている側の心のつっかえ棒を外されたような中途半端さ。
他のテストジャンパー達の描き方も似たような描き方になったて全部中途半端。
もっと西方の側に立ってる見ている観客の目線で描かないと。
まあ、他にも言いたいことはあるがこのくらいに。
ラスト、西方の息子が手作りの金メダルを彼にかけてあげるシーンにはさすがにグッと来た。
映画を愛して欲しい!!