劇場公開日 2021年3月12日

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「あえてツッコまずに勢いで観ましょう!」ブレイブ 群青戦記 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5あえてツッコまずに勢いで観ましょう!

2021年3月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

予告から、トップアスリートが集う高校が丸ごと戦国時代にタイムスリップし、高校生たちが鍛えた体と技術で戦国の世に衝撃をもたらす、「戦国自衛隊」的展開かと思ったら違いました。開幕早々、生徒の大半が、たかが雑兵ごときに次々と斬り殺されていく地獄絵図。予告で何度も見た、スポーツ技術を用いた快進撃など全くありません。

でも、考えてみれば、ルールを守って競うスポーツと、問答無用の殺し合いでは、必死さのレベルがまるで違うのは当たり前。命のやり取りを生業とする相手に、現代高校生たちが勝てるはずもないのです。こうしてなすすべなく囚われの身となった彼らに徳川家康が接触したところから、織田軍に連れ去られた仲間の奪還と、自身の生き残りを賭けた、高校生たちの熱い戦いが始まります。そこにさらに、不穏な雰囲気の漂う武将が絡むことで、歴史の改変が絡む展開となり、おもしろさが加速します。

こうしたストーリーの魅力もさることながら、多数登場する若い役者さんたちの演技もなかなかよかったです。突然命の危機に晒され、仲間のために文字どおり命をかける高校生を、全員が熱演しています。この演技に緊迫感がないと、観客がしらけて作品が根底から揺らぐだけに、演者全員でいい作品を作り上げようとする意気込みが伝わってきます。主演の新田真剣佑くんは言うまでもなく、脇を固める鈴木伸之くんも持ち味を生かした安定の演技を見せ、仮面ライダーウォズ役が記憶に新しい渡邊圭祐くんも大事な役どころを好演していました。中でもヒロインの山崎紘菜さんは、目に力の宿る、いい演技を見せています。そしてなんといっても、三浦春馬くんが本作でも抜群の存在感を発揮し、作品をしっかり支えています。本当に惜しい人を亡くしました。

ただ、一方でツッコミどころもそれなりにあります。なぜ校地だけがきれいに切り取られて飛ばされたのか、どうして教師たち大人が誰もいないのか、丸腰の高校生たちが殺意むき出しの相手に向かっていけるのか、いくら仲間が斬られたとはいえ戦場で駆け寄るか、その間に敵はなぜ斬りつけないのか等々。このあたりのことを気にせず飲み込めるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの分かれ目のような気がします。

あまり書くとネタバレになりそうですが、大好きなBTTFへのオマージュもあり、タイムスリップものについてまわるタイムパラドックスに触れる部分もありで、自分は全編通して楽しめました。さあ、このタイムスリップはどんな結末を迎えるのか。ラストは自身の目で確かめてください。

おじゃる