ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方のレビュー・感想・評価
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美麗な自然とキャラの立った動物の映像が楽しめる“理想の農場”ドキュメント
ロサンゼルス郊外にある東京ドーム約17個分のやせた土地を、自然と共存した豊かな農場に変えていく8年間のドキュメンタリー。映像がとにかく綺麗で撮り方も格好よく、自然のなかで生きる動物たちの貴重なショットを沢山見ることができます。 夫婦が農場をつくるきっかけになった犬のトッド、出産シーンが印象的な豚のエマ、そのブタと仲良くなるニワトリなど動物のキャラが立っていて、展開も劇映画かと思うぐらい面白くできています。ドキュメンタリーにありがちな辛気臭さやお勉強しましょうといった感じがないのも好感がもてました。 中盤、農場の貴重な収入源である卵を産むニワトリがコヨーテに襲われ、農場主でもある監督はコヨーテに銃を向けつつ葛藤します。害虫や害獣を安易に排除しないことから頓知のように生まれてくる共生のアイデアはゲームのような面白さがあり、「DASH村」の大規模バージョンを見るようでした。
題名通り、見応えあるドキュメンタリー映画
世界各国の映画祭で観客賞など数多くの賞に輝いたドキュメンタリー。ロサンゼルスから郊外に引越し、大自然の中で究極のオーガニック農場を目指す夫婦2人の8年という長い年月で巻き起こる奮闘の様がリアルに映し出されていく。 夫婦が里親となった黒いワンちゃんを筆頭にどんどん「新たな家族」が増える一方でトラブルも増えていくが、それらを乗り越えていく2人から「本能的な人間の強さ」さえ感じる。 コントロールできない自然を相手にしているため、思いもしない状況が常に生まれる臨場感が、通常のドキュメンタリー映画と一線を画す本作の魅力である。 困難は自然だけではなく、夫婦に知恵を与えていた唯一のアドバイザーである師匠が歳を重ねて弱ってしまう切ない状況でも生まれる。それらの困難に夫婦は、自分たちの理想の実現に向けてどのように立ち向かっていくのか? 「オーガニック」という美しい響きからは程遠い「過酷な現実」の課題にぶつかっていく綺麗事無しの本作だからこそ、夫婦の絆や自然の厳しさ、それらを乗り越える瞬間がその都度心に響く。 本作を見ることにより、日常生活では目を伏せがちな「自然の調和による、時には残酷な理想と現実」が垣間見える。 思わぬトラブルにぶつかり続けながらも笑顔を絶やさずに常に自然と向き合う8年間の現実だからこそ、地球(自然)と人間(生命)のあるべき姿などをより深く考察するきっかけにもなる秀作。
小さな生態系、大きな感動
公開1週後の3月23日時点で注目度32位は、比較的地味なドキュメンタリーにしては大健闘だろう。映像作家と料理研究家の若夫婦が、無駄吠えする愛犬と共にアパートを追い出され、郊外の放棄された農場に移住する。農地が荒れ果てた原因は単作だったことから、夫婦は多品目を栽培し、家畜も多種類飼育する複合農業によって土地の再生を目指す。 愛らしい動物たちをとらえた映像が何とも素晴らしい。大きな母豚エマの小屋に物好きな鶏が闖入し、最初は迷惑そうだったエマも諦めて同居するエピソードなんて最高だ。台本通りに動くわけもない、予測不可能な動物たちのふるまいを長期間にわたって追い続けた撮影者の根気強さに感心する。 作物を荒らす害獣や害虫を、飼っている動物たちが餌にして駆除してくれるという展開も痛快で鮮やか。動植物と景観を瑞々しく収めた美麗な映像のおかげもあり、意外なほど大きな感動と癒しをもたらしてくれる。
自然農法
自然農法のドキュメンタリー。いい面ばかり特集されがちな農法をトラブル込みで美しい映像とともに描かれている。ここまでダイナミックな森を舞台にして、動物もたくさんで癒やされ映画だった。規模がでかいので、森の中に住んでいるようである。
特にカタツムリなど害が出てきたときの対応策は面白かった。天敵を増やす。コヨーテの天敵はおそらく人間などになるのだろう。そう考えると、動物界のトップに位置づけられるとして欲をコントロールし始めたのは人類の進化であるような気もしてきた。最近では熊で話題だが、適度に間引くのは自然にとって重要なのだろうか。
そうした観点から見ると今の少子化も一種の自然の連鎖の中の一つの「意味」のある事象という側面もあるのではないかと思った。増えすぎないように自然調和されているのかもしれない。
しかしこの自然農法は唯一、異常気象やビジネスとしての生産への対応は弱い気もした。傷だらけだけどうまいは買ってくれるかもしれない。しかし異常気象で干ばつになったら。数千年単位の長期目線で見れば予定調和されていくと思うが、その変革期でこれで生産、ビジネスを起こすとすれば、自給自足ならいいが、ややどころかかなりの忍耐力と仲間や友人がいないと難しいだろと思った。
楽しみながらものすごく勉強できるドキュメンタリー。食物連鎖、自然の...
楽しみながらものすごく勉強できるドキュメンタリー。食物連鎖、自然の偉大さ。 ・コヨーテはやりたい放題 ・ホリネズミは食われ放題 ・豚は生涯に何頭子を産む? 農業に従事する方に敬意を表します。
生物多様性を極限まで高める事
野生動物番組カメラマンジョンとモリー夫婦は自然と共生する農場を作ろうとしていたが皆に理解されなかった。それは保護犬トッドが目的を教えてくれたのだった。 犬が原因で二回もアパートを追い出されても犬を捨てないどころか枯れた土地に農場を拓くなんてね。生物多様性を極限まで高める事。牛やカモなど家畜も大量に導入した様に行動のレベルが違う。素晴らしいね。でも農場を護る事は戦いの連続だ。根気のいる仕事だな。全体を通して社会勉強させてもらったよ。
こんな暮らしをしてみたい(?)
夫婦2人で農場を一から始めるというドキュメンタリー。 こんな暮らしは憧れるけど、大変そうだ(^_^;) この作品の場合、良いアドバイザーがいたおかげで成功した。アドバイザーによっては上手くいかなかったんじゃないかねぇ~? もうひとつ上手く行った理由は、奥さんの明るさじゃないかな? いつもニコニコしてて、こんな奥さんと一緒なら、いつでも前向きに暮らしていけそう(^^)b 可愛い動物たちや美しい映像を見ながら、自然の事を考えさせられる作品でした。
1匹の保護犬がもたらした素敵なお話。カリフォルニアに自然豊かな小さ...
1匹の保護犬がもたらした素敵なお話。カリフォルニアに自然豊かな小さな地球を創り出した物語。絶妙なバランスの自然界の生態系を再生し、それを持続、循環させる農園、農業に挑戦している夫婦のドキュメンタリー。 こういうの観てしまうと、地球という生態系の中で人類という動物はどういう役割を果たしているのだろう?生態系の中ではただの邪魔者ではないのか?そのうち自然に淘汰されてしまうのではないか?などと思ってしまう。温暖化による気候変動。異常気象も自然、生態系による人類に対する淘汰の始まりなのかも・・な。 ただ、地球というシステムの中で、全ての植物、動物に、物語の中のコヨーテ様に、生きる役割が与られているという前提にたてば、個々の人間にも、生を授かった意味があるのだろうなぁとも思う。つまらん事の惑わされて無駄に時間を費やす訳にはいかないよな♪
つまり、自然とは、、、、、、、、、、完璧なんだ。
仏教の輪廻転生と食物繊維は非常に酷似している。それが『自然だ』と力まずに彼らは語る。
どこまで演出なのかは分からぬが、それを差し引いても、続編が見たくなる作品だ。
高畑勲先生『思いでポロポロ』や『平成ポンポコ』を思い出した。
現代の『大草原の小さな家』だね。
勿論
これだけの事をやる亊に全く脚色がないとはいえないかも。でも、基本理念が間違っていないし、ここまでやれば、海面が上昇するなんて亊を無理強いする事はなくなるので、大いに共感する。人工的で市場主義に特化した内容であっても、やってみれば良いと思う。
荒れ果てた農地を夫婦で蘇らせていきました。妻のモリーが「本当に体に...
荒れ果てた農地を夫婦で蘇らせていきました。妻のモリーが「本当に体にいい食べ物を育てるため」に郊外で住むことになりました。自然災害などありましたが、夫婦で乗り越えてました。改めて、オーガニックのありがたみを知りました。
自然に学ぶ農園づくり
保護した愛犬トッドが吼えるので都会暮らしをあきらめて田舎に引っ越すという愛犬家によくある話かと思ったら本格的な農場経営とはすごい飛躍ですね。
LAから北へ64km、ムーアパークの農園アプリコットレーンファームズの創設と発展までの8年間を追ったドキュメンタリー。土地勘が無いのでピンとこないが東京で言えば奥多摩当たりの遠さでしょうか。
広さ200エーカーはマザー牧場の1/3位だからリトル・ファーム。そこに家畜850頭、果樹1万本のほか花、野菜、ハーブなどをバイオダイナミック農法で育て地元やネットで販売、観光ツァーも営なんでいる。
農場主のジョン・チェスターさんはテレビの動物番組で世界を取材したドキュメンタリーの本職なので農園・牧場を拓く経緯を撮り溜めていたようです、自らキャストを務める手法はムーア監督流ですね。
メインは農業の素人のチェスター夫妻がメルボルン大学のアランヨーク名誉教授にバイオダイナミック農法の手ほどきを受けながら軌道に乗せるまでの失敗と復興の記録です。
バイオダイナミック農法というのは有機農法を更に純化、土壌づくり、肥料から害虫駆除まで農場の生態系の自然な営み、循環で行うと言うもの、百聞は一見にしかずではないがミミズを培養して肥料を作ったり果樹の下草を食べて刈るのは山羊さんたち、アブラムシの天敵がテントウムシ、野ねずみはフクロウ、葉を荒らすかたつむりはアヒルがついばむところなどつぶさに見せてくれています。17頭も出産するお母さん豚や孤独な鶏との絆、親を亡くした子ヤギの乳母探し、コヨーテから家畜を守るわんちゃんなど流石に動物を撮るのが本職なので見いってしまいました。
幸いに山火事の被害も無くホッとしましたが自然頼みの生き方というのは薄氷を踏む思い、おいしくて安全な食材を作ってくださる農家さんには感謝ですが理想の暮らし、憧れには至りませんでした。
綺麗事ではできないですね
自然の中で自然を相手に生きることは、綺麗事ではできないですね。人類は、沢山の災害、病気などがありながらも自然と共存してきて、その対抗策としてテクノロジーを発展させてきたけれど、逆に人類が増えすぎてしまった弊害もあるし。かといって、世界中で開発は止まらないだろうし。志が高い主人公の生き方が、哲学的でもありました。
理想郷
自然農法で色々な困難に立ち向かいながら理想郷を作って行く夫婦のお話。美しい風景の微笑ましい光景の中にもそれを崩して行く厄介な出来事。それらを自然の力で立て直していく。なんとも羨ましい世界。 豚さんはあんなに沢山産まれてくるのね、とびっくり‼️
理想郷
自然との調和。 オーガニックを育てるためには肥沃の土地にする必要があり、そこには動物、昆虫等が不可欠となる。 ドキュメンタリーでどうかなと思って見たら、 現実の厳しさ困難が描かれており、ドンドン引き込まれていく。 自然との共存、野生動物も段々姿を表し、共存するための策が描かれる。 生と死。 其れでもここは理想郷で神様の贈り物。素晴らしく完璧な世界。
とても西洋的な思想に基づく自然の作り方
自分たちが良いとした形に土地を整形していく そしてとってもコストを掛けています このあたりに違和感を覚えるとなかなか入り込めない 旧約聖書で云う「人間は自然の支配者」としての組み立て、なので日本人観でいう自然ではないんだよね 自分にも子どものころに飼っていたチャボを野良猫に食われて泣いた過去があるので、コヨーテに対する殺意が芽生えるのは同情するのだけど、彼らの気持ちはそれとはだいぶ違うところにあるはず いいものはこっち、それ以外はあっちって柵をこしらえて除け者にするのが彼らの回答 アメリカファーストみたいな考えだけどそれでいいんだろうか? 「理想の暮らし」とかじゃなくて、箱庭的、アクアリウム的な楽しみ方でいいと思う
きれいな映画を楽しみながら、「共生」 について理解することができます!(2)
さすが、キネカ大森! 「ビッグリトルファーム」 と 「ハニーランド」。この組合せ、最高!!!! 共に、"共生" の物語。一方は、農業で荒れ果てた土地を、生物多様性のある土地に再生しようとする人々の物語であり(「ビッグリトルファーム」)、もう一方は、北マケドニアの厳しい自然から、自らのわずかな取り分だけをいただいて生きるひとりの女性の物語である(「ハニーランド」)。 こちらは、長年の単作農法という "人為的な" 作業によって荒れ果ててしまった土地を、7年という年月も金も人もかけて植物(作物)も様々に作るし、それだけでなく多くの動物をそこで飼うことによって、生物多様性を復活させる。それができれば、多様性のバランスをわすかにコントロールするだけで、作物の収量を最大化することができるはず、というひとつの理想に取り組む。 書くと、小難しくなってしまうが、とにかく一度観ることをお勧めします。"生物多様性" という、最近時折聞くようになった言葉がどんな意味なのか、映画をみればなんとなくですが入ってくると思います。観ると、ミミズにも触れるようになるんじゃないかな。観ても、ウジ虫はちょっとやだな。 実際、7年めに、農場の生物(動植物)に対して、意図してやっていることは、「コヨーテが鶏を食わないように、犬に守らせている」 ということだけであろう。それ以外は、7年間で作り上げてきたバランスに任せている。コヨーテも、鶏が食えなければ、ホリネズミ(モグラみたいな動物で、増えると農作物が被害を受ける)を食って、その繁殖を妨げる。 「こうしたバランスがとれた世界(農場)を作り上げれば、そこで行う農業は、(農薬は不要だし)思ったほど大変ではない」 と人々に説いて信じさせるアランさん(故人)はもちろんすごいし、その言葉を信じて、アランさん亡き後まで継続し続けて実現して見せた、主人公ふたりを中心とした協力者たち全員もまた、すごいと思う。「百聞は一見に如かず」 だし、その "一見" を実現してみせたことが、この上なく偉大。そして、それを、本作のドキュメンタリー映画として、後世に残せたことは、人類の資産のひとつだと感じる。 かたいことばかり書いたけど、映画は、軽妙だし、映像はきれいだし、絶対に肩ひじ張らずに観られます。そして、楽しく観終わってからしばらくたって、作者が伝えたかったことが腑に落ちる、そんなタイプの映画だと思う。とても、好きです。 人間が壊してしまった土地も、悪意があったわけではなく、より豊かな暮らしをしたいと思った結果なわけなので、"未熟だった" だけなんだと感じることが大切と思う。善か悪か、ではなく、自然との共生にむけて進歩していく道を、私たちはこうやって進んでいるのだと思う。 冒頭に書いたように、この映画 「ビッグリトルファーム」 で 「壊してしまった自然を、共生できる姿に再び戻す姿」 を観たら、 「ハニーランド」 で 「すでにある自然と共生する姿」 を観ることを、強くお勧めします。
夢のようなドキュメンタリー
映画.comの特別オンライン上映会で昨日視聴。 本当は映画館で観たい作品だったがコロナでタイミングを逃してしまっていたので、オンライン上映会の案内に1,500円はちょい高だと思いながらポチり。。 評判通り素晴らしいドキュメンタリーだった。 究極のオーガニックってどんなの?と、思ったら生物多様性を荒地に再現するという途方もない構想… 料理家と映画監督という農業者でない夫婦だからこその行動だろうなと。何より、よくこれを実現しようと思ったなあ、とそれに驚き、また数年で実現したというのにも更に驚いた。その過程での気の遠くなるような、普通なら投げ出したくなるような様々な自然の脅威に見舞われながらも諦めずに乗り越え、本当に素晴らしく、美しい、理想の「ビッグリトルファーム」を作り上げた。均衡が取れた自然は美しい。ファームの美しさは自然の均衡が完成されたことの証。
自然との共存への挑戦
巨大農場になるまでの苦楽をテンポ良く、しかしドラマチックに紹介した傑作ドキュメンタリー映画。 毎晩のように鶏を襲いにやって来るコヨーテ。 しかし「コヨーテは害獣ではない」と言う経営者の懐の広さ、問題解決能力に、困難に直面する人はきっと勇気をもらうことだろう。
「自然は完璧」を具現化した映画
秋田県大館市にある東北地方唯一の単館常設映画館「御成座」にて、この作品を鑑賞してきました。 昔ながらの手描き看板や趣のある建物など、雰囲気の抜群に良い映画館ですので、是非一度は訪れて欲しい場所です。駅から徒歩2~3分程度の立地ですので、アクセスも良いです。 とまあ、映画館の紹介はこれくらいにして、映画の説明です。 結論から言うと、めちゃくちゃ良かった!! こういうドキュメンタリー映画は今までほとんど鑑賞していないジャンルなのであまり観慣れていないのですが、全ての映像が作り物では出せないリアリティを持って映写されていますので、迫力があります。自然の連鎖と繋がりを観る事ができ、監督撮影を行なったジョンによるハンディカメラの映像が、まるで観客である私も農場の一員として、果樹や動物たちに触れ合っているかのような没入感を生み出します。匂いすら錯覚させる圧倒的なリアリティ。それがこの作品の魅力です。 ・・・・・・・・・・・・ 自然を愛する夫婦のジョンとモリー。「究極のオーガニック農場を経営する」という夢を持っていたが、なかなか今の生活を捨てて未経験の農業に手を出すことができなかった。 しかし、保護犬のトッドを飼い始めてから状況は一変。吠え癖のあるトッドの騒音が近所迷惑だとマンションを追い出されてしまったのだ。ドッグトレーナーに預けてみたり、犬を落ち着かせるグッズを試してみたが効果は無く、引っ越した先でもまた苦情が寄せられるようになってしまった。 そんな時に「オーガニック農場を経営する」という夫婦の夢を思い出した。広大な農場ならば近所迷惑になることは無い。愛犬トッドとのびのび生活するため、夢の実現に向けて夫婦は動き出すのであった。 ・・・・・・・・・・・・ 一匹の犬が、一組の夫婦の人生を変えた物語。理想の農場を目指して資金調達を行い、志を同じくする伝統農業のプロフェッショナルのアランと共に、枯れ果てた郊外の土地での農業が始まります。 彼らが目指すのは「多くの作物・多くの家畜たちが自然と共存し、農場の中で自然のサイクルが循環するような農場」。それは一般的に行なわれる一つの作物のみを作る単作農業でもなく、またビニールハウスで保護されたような管理農業でもない。いくつもの作物と何種もの家畜をほぼ自然の状態で育てるという農業モデル。正直、誰の目から見ても「無謀だ」と分かります。 しかしその無謀な農業に挑んだ一組の夫婦と・一人の専門家と・一匹の犬。 序盤は専門家のアランと、インターネットで募集した若者たちの力を借りてどんどん不毛な土地を開墾していき、乾いた土と生い茂る雑草に埋もれていた土地も見違えるような緑の土地へと変貌を遂げます。 序盤はトントン拍子に農業が良い方向へと転がっていきますが、中盤あたりから雰囲気は一変。コヨーテによって鶏が捕食され、カタツムリによって柑橘類の木は荒れ、プラムの実は野鳥の餌となり、被覆植物はホリネズミによって枯れ果てる。序盤の流れが嘘のように、何をやっても上手くいきません。 本来ならば建物の中やビニールハウスに動植物を入れて徹底的に管理するのがセオリーでしょうが、彼らが理想とする「伝統的な自然農法」に反するので、それらの対策ができません。自らの理想が重い重い足枷となります。 理想を追い求める夫婦が、厳しい現実にぶつかったときにどのような行動に出るのか。 監督・主演・撮影を務めるジョンは、カメラマンとして働いていただけあって絵作りが非常に上手いです。序盤のホームビデオ的に撮影しているシーンから、既にカメラの角度とか画角がしっかりしています。 ストーリーの構成も上手い。映画全体でキッチリと起承転結が出来上がっているように感じました。多少の演出や脚色はあるのでしょうが、ドキュメンタリーとは思えない、まるで小説のように物語が進行していくのは見応えがありました。物語の最初に山火事のシーンを持ってきたのも、個人的には上手い構成だったと思います。 最後に圧倒的な映像美。農場が出来上がるまでの実際の映像。広大な農場の映像。元気に動き回る動物たち。自然に生きる昆虫や野生動物や野鳥などなど。8年間自然の中で生活し、撮影を続けてきたジョンにしか撮れない映像だったと思います。 たった91分の映画の中で自然の循環を体験し、多くの感動が得られる。本当に素晴らしい映画だったと思います。オススメです!!
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