「亡くなった者の想いも背負い生きていく日々の生活の中にあるかすかな光を淡々と」ステップ バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
亡くなった者の想いも背負い生きていく日々の生活の中にあるかすかな光を淡々と
妻に先立たれても子供がまだ小さいと悲しんでいる余裕もなく、限られた時間の中で育児、家事、仕事、手続きなど日々をただ生きることが精いっぱいになる。実は私は今作と同じというか、更に過酷な日々を味わったことがあり、とても他人ごとだとは思えなかった。
私の場合は、妻が癌になり、更にその時に子供が同時に産まれ、上の子はまだ2歳という状況の中で、妻は骨に転移していて、動くこともできなかったため寝たきりとなったため、妻の介護と2人の子供の育児、家事など全てが降りかかってきた。
事情が事情ということもあり、保育園にすぐ入れてもらうことができ、市役所の人のがんばりで0歳でも4ヶ月目から保育園に預けることができたが、妻の介護はほぼオールタイム。自営業だからまだ成立ったとはいっても1日2時間しか仕事ができず、妻は保険に入っていなかったため、資金難にも陥った。
睡眠時間も4時間寝られれば良いほうで、疲労から車の事故も起こしたりと映画のように「もうダメかもしれない」と思ったこともある。
だからこそ、今作は全てが突き刺さるというか、うちの子供はまだ小さいが、いずれは経験しないといけなくなる、母親のいない学校の行事、入学式や卒業式も自分だったら、子供にどんな声をかけてあげられるだろうかと想像してしまう。
ストーリーとしては、淡々と日々が過ぎていき、その中で共に成長していく父と娘の姿の10年間を描く中で、残された者たちがどう生きていくという点でも様々な出来事を扱っている。
単純に父と娘の物語として感動はできると思うが、物語が単調なのと、時間の流れや登場人物の移り変わりも激しくため、分かりやすい感動というのは、少々し辛い部分があるかもしれないが、同じような経験がある人や、大切な人を失った経験がある人なら、残された者はそれでも生きていかなければならないという部分で共感する部分も多いはず。
今となっては名女優である伊藤沙莉、川栄李奈が時の流れとともにフェードアウトしていくのは勿体なかった。