「改変がどう映るか」劇場版 DEEMO サクラノオト あなたの奏でた音が、今も響く あしゅーさんの映画レビュー(感想・評価)
改変がどう映るか
原作ゲームはアプリ版、後日談を補完したVITA版プレイ済、加えてノベライズ版を読了した上で鑑賞。
原作に沿ったパートとオリジナルのパートを交互に展開する構成だが、全体的にオリジナル展開多め。原作パートも状況説明を担うキャラクターが追加されたり、展開が一部改変されていたりする。主人公のアリスの性格や言動もより活発、年相応なものに変更されているため、原作の儚げで想像を掻き立てる作風に魅力を感じていたユーザーは肩透かしを食らうかもしれない。
とはいえゲームで慣れ親しんだ楽曲の数々を劇場の音響、そして豊かな3DCGアニメによる表現と共に楽しめたり、原作の小ネタ的要素もある程度拾ってはいるため、既プレイの場合ならそれなりに楽しめる展開となっている。特に終盤の演出は原作にはなかった要素を付加させたもので、シナリオを再現するだけでは得難い感触を楽しむことができる。
一方で未プレイの方が鑑賞した際には上記の見どころの価値が薄れてしまうためやや物足りない、凡作といった印象を受けてしまう懸念はある。説明不足のまま勢いだけで終始進行してしまう側面もあるため、可能であれば原作をクリアした上で鑑賞して欲しい。(たぶん5倍は楽しく感じる。エンディングまでそれなりに長いけど……)
全体的に量産型ゲーム原作の集金アニメ化作品としては中の上程度の出来の作品だが、映画栄えを意識したであろう改変を許せるかどうかで評価が大きく変わる作品である。
既プレイの人向けのプロモーションでありながらも原作からの改変が目についてしまう箇所もあり、どの層をターゲットとしたかが今ひとつ判然としない。
しかしながら劇中の音楽や音響、そして声優陣の演技はなかなか高クオリティ。あまり肩肘張らず気楽に鑑賞する事をお勧めしたい。