劇場公開日 2020年2月29日

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「クズな大人、苦しむ子どもたち」子どもたちをよろしく Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0クズな大人、苦しむ子どもたち

2020年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

クズな大人しか出てこない作品である。
その下で苦しむ子ども、そして、同級生をイジメる子どもがいる。
さらに、家庭内では表には出ない、性的暴力を含むDVがある。

元文部官僚の寺脇研が、「デリヘルの運転手の息子」を基本構想に、隅田靖に声をかけ、4年前から練り上げて“社会派”劇映画として制作した作品だ。
寺脇によれば、最近の子どもは“自己肯定感”が乏しいという。また、イジメる側も問題を抱えているはずで、そこを解決しないとダメだという。
本当の“現実”は様々であろう。
この映画では、企画の寺脇と監督の隅田が考えた“現実”が、象徴的に提示されたということだと思う。

ドラマとしては実直な感じで、テーマの重さを考慮しても、良い意味での“外連味”がないのが欠点かも。
登場人物は少ないが、「必要なのかな?」と思うシーンがある一方で、あるべき描写が乏しかったりと、偏った印象を受ける。
また、子どもの苦悩を「ああ~!」という叫びで表現したのは意図的であろうが、賛否両論あると思う。

ただ、デリヘル嬢・優樹菜の迎えるラストは、「ええっ?!」というような展開で、そこは見てのお楽しみである。
ある種の“飽和点”に達してしまった女の選択。寺脇によれば、十分意図したストーリーだという。

事前に知らされてなかったが、自分の観た回は、ゲストに原一男監督が登場というか、“乱入”して(笑)、「聞きにくいこと」をバシバシ聞いてくれたので参考になった。
ここでバラしても良いと思うので、あえて書くが、たった一千万円で制作された映画だという。撮影は11日。
いかに、スタッフや俳優が“意気に感じて”、工夫して制作した映画かということだ。

コロナウイルスで観客動員数の減少が懸念されるが、一斉休校が大きなニュースになったことで、「給食が大切な栄養源となっている子どもがいるという現実に、目を向ける良い機会だ」と寺脇は言う。
それにしても、自分は最近、川瀬陽太をよく観るなあ・・・。

Imperator