「爽快なラスト」グッドライアー 偽りのゲーム Anaphylaxisさんの映画レビュー(感想・評価)
爽快なラスト
女性の思惑が最後まで分からず進行していく物語が良い。
ラストシーンで主人公のトラウマを想起する場面が二つある。
一つは計画の協力者であり、孫の恋人からの「好ましく思っている」という言葉。これは、詐欺師のロイが昔から相手をはぐらかす時に使う台詞だ。幼い頃に初めて想いを寄せた相手から、レイプされる直前に言われた言葉。
リリーは少しの間その言葉を反芻し、過去を知らずにそれを発した相手に優しくキスをする。
もう一つは、池で戯れる孫娘たちの叫び声。リリーは思わず無事を確認しにいく。そこには、この世に危険など一つもないかのように無邪気に遊ぶ、かつてのリリーたち姉妹のような孫たちの姿。リリーは安堵し、目を細める。その顔には自信と誇りが溢れていた。
ここに至るまでの彼女の葛藤を思わずにはいられない。自分の安全だけでなく、子育ても緊張の連続だっただろう。それも過保護になりすぎないよう、細心の注意を払いながら。付き合う相手は人柄を第一に見定めて…。不安にかられては、立ち向かい乗り越えてきた。その度に辛い過去が少しづつ上書きされていったのだろう。
そんな彼女の歴史が、最後のシーンに凝縮されている。緑と光と笑顔に溢れた庭。
一方で、リリーから金を騙し取ったあとは南の島で老後を過ごす魂胆だったロイは、「一生世話になんかなるもんか」と言っていた無料の医療サービスの病院で、壁に描かれた寒々しい海辺の絵を背に、自ら食事をすることもできない。唯一の訪問者である自分を裏切った詐欺仲間から、「シャンパンだと思って飲め」と水を飲まされる。全てが偽りの世界。
庭、家族、成功、落伍者、皮肉。とてもイギリスらしい上に、爽快なエンディングだった。