「新たなるフェーズの幕開け! …に、本作は果たして適切だったのか?」ブラック・ウィドウ たなかなかなかさんの映画レビュー(感想・評価)
新たなるフェーズの幕開け! …に、本作は果たして適切だったのか?
アメコミヒーロー映画「MCU」シリーズの第24作。
『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)から『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』2018)までの間の物語であり、ブラック・ウィドウとかつて彼女が所属していた組織「レッドルーム」との戦いが描かれる。
ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウを演じるのはスカーレット・ヨハンソン。なお、本作はヨハンソン自らが製作総指揮も担当している。
新たなキャストとして、ナターシャの"母"であるメリーナ・ヴォストコフを演じるのは『ハムナプトラ』シリーズや『コンスタンティン』の、オスカー女優レイチェル・ワイズ。
ナターシャの"妹"、エレーナ・ベロワを演じるのは『ミッドサマー』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のフローレンス・ピュー。
ナターシャの”父”であり、旧ソ連が生み出したスーパーソルジャー、アレクセイ・ショスタコフ/レッド・ガーディアンを演じるのは『スーサイド・スクワッド』やテレビドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のデヴィッド・ハーバー。
「レッドルーム」からの刺客であるタスクマスターを演じるのは『007/慰めの報酬』『オブリビオン』のオルガ・キュリレンコ。
製作はケヴィン・ファイギ。
遂に幕を開けました、「フェーズ4」!🎉
本当はドラマシリーズである『ワンダヴィジョン』(2021)から既に始まっているのだけれど、ドラマまで追っかけてたらキリがないので、自分にとってのフェーズ4の始まりはここから。
コロナウィルスの蔓延に伴い、公開日は延期に次ぐ延期。結果として、1年以上もファンは待たされたことになる。
ヤキモキしながらこの1年を過ごした人も多かったのだろう。
本作を鑑賞してみて一番気になったのは、作品の中身というよりも、これがフェーズ4の幕開けに本当に相応しい作品なのか?ということ。
本作はこれまでのMCU作品に比べると、ダントツでポリティカルな内容。
「女性解放」というテーマが、ある意味では比喩的に、ある意味ではストレートな形で作品に表れている。
本作をフェーズ4の頭に持ってきたということは、このフェーズはこれまでとは違い、フェミニズムや人種の多様性、LBGTQなどのポリティカル・コレクトネスを前面に押し出したものにしていきます、ということの宣言なのだろう。
そういう意味では、確かに本作がトップバッターであることは適切であると思う。
しかし、肝心なのは映画の中身。
内容が悪いということではなく、なぜこのタイミングでこの物語を描かなくてはいけなかったのかがイマイチよくわからない。
本作は『シビルウォー』の直接的な続編。
『シビルウォー』は確かにMCUの中でもトップクラスに重要な一作ではある。
とはいえ、『シビルウォー』が公開されたのは2016年。5年も前である。
「鉄は熱いうちに打て」というが、どう考えても『シビルウォー』という鉄は既にキンキンに冷えてしまっている。
正直『シビルウォー』以降に10作品も作られた結果、自分のようなにわかファンにとって『シビルウォー』の内容はほとんど忘却の彼方。
「ん?ナターシャが逃げているのってなんでだっけ?というかこれ時系列はどこなの?『インフィニティ・ウォー』の時はナターシャ何やってたっけ?」みたいな感じで、気が散ってしまい物語に入り込めませんでした。
どう考えても、本作は『シビルウォー』から『インフィニティ・ウォー』の間に制作&公開すべきだったよね😅
本作は過去作に比べてもグッとシリアス。
ただ、バイオレンス描写も多いシリアスな作風でありながら、あんまり血が出ないことに違和感…。
ファミリー映画だから仕方ないとは思うんだけど、ナイフで腹を裂かれたのにほとんど出血していないというのはどうなのか?
シリアスな映画だとはいえ、フローレンス・ピュー演じるエレーナや、ロシア版キャップのレッド・ガーディアンがコメディ・リリーフとしての役割をしっかり果たしているので、堅苦しい感じはしない。
この2人が居なかったら、本当にどんよりした映画になっていたことだろう。
本作はウーマンリヴを掲げた、ポリティカル・コレクトネス要素が強めの作風。
PC成分が強めな作品…なのに、ロシア人を演じるのはロシア系の役者じゃないんだね😅
エレーナもレッド・ガーディアンもメリーナもみんなロシア人な筈なのに、役者はアメリカ人やイギリス人。そこはポリコレを適応しなくても良いんかいな。
ピューもワイズもデヴィッド・ハーバーも、みんな素晴らしい演技をしていたからいちゃもんを付けたくはないんだけど、PCを強く意識させる作品だからこそ、そこがついつい気になってしまった。
タスクマスターを演じたオルガ・キュリレンコさんだけは、旧ソ連出身でロシア系のお方。
でもタスクマスターの設定から考えると、オルガ・キュリレンコじゃ年齢合わなくない?
多分タスクマスターって20そこそこだよね?少なくともナターシャよりは断然年下な筈だし。そこら辺はあまり深く考えちゃいけないところなのかしら?
タスクマスターの扱いに関しては結構不満。
この人、ナターシャによって人生をめちゃくちゃにされてしまった、ある意味では作中一番の被害者。
本来ならメインヴィランとして、ナターシャの精神をグラグラに揺るがす存在として描かれてもよかったと思うのだが、なんか巨悪の添え物として描かれているだけで、キャラクターの掘り下げとかが殆ど為されなかった。
操られて殺人マシーンになってしまった、というのもウィンター・ソルジャーの焼き直しだし、イマイチ魅力に欠けるんだよなぁ。
ナターシャとタスクマスターの関係性は、絶対にもっと掘り下げるべきだった。I'm sorryで許せるわけねぇだろぉ。
うーむ、文句が多くなってしまった😅
別に嫌いな映画ではないのだが、世間一般で評価されているほど、自分にとっては面白いと思えなかった。
正直、最近のMCUはディズニー+に加入させるための道具として扱われているような気がして、なーんか乗れなくなってしまった。
MCU熱が冷めてしまっているのも、楽しめなかった原因かもしれません。