「この映画、何が難しいって」ブラック・ウィドウ tkryさんの映画レビュー(感想・評価)
この映画、何が難しいって
エンドゲームで、既に彼女の物語の結末が描かれているため、観客のモチベーションをどこに持っていくかですよね。
この点、本作は普通の映画以上に興味が持続されるよう工夫が凝らされているため、最後まで飽きません。
良い点を羅列すると
•ナターシャへの労いとエレーナへの完璧なバトンタッチ。フェーズ4の一発目でやる必要があったのは正にこのためなのでしょう。フローレンスピュー、この若さでこの演技力、貫禄は末恐ろしいです。
•ナターシャたち家族の間にある「何らかの事情」は、物語が進行するなかで徐々に明らかにされていく点。
•意外にも会話劇の側面が強いのに、飽きない。皆さん仰られる食事シーンを始め、会話の端々でちょっとした不協和音と、相反する絆みたいなものを感じられ、楽しかったです。ここは芸達者達のアンサンブルの賜物でしょうね。
•終盤についても我々観客には敢えて作戦の全容を伏せることで、物語がどう転ぶのか、緊張感をもたらせていてよかったです。
•個人的にグッときた場面は序盤の潜伏シーンです。好きな映画を観ながらセリフを言うところで、彼女の人間ぽさが表れていてほっこりします。あと、本作を最後まで観ると、このシーンは元ネタである「ムーンレイカー」のオマージュをやりますよーという制作者側のお遊びだったと遡って分かるのも面白いですね。
•レッドルームのボスとの対峙シーンも、アベンジャーズ1作目のロキとのシーンを彷彿させるもので楽しめました。シリーズが進むにつれて、ナターシャのスパイ描写って実は後退してたんよなーと、この「らしいシーン」により改めて思いました。。
逆に悪い点というか、気に食わないのは、この作品の中身云々ではなく、拝金主義的なディズニーのやり方。
映画産業の背骨たる映画館が苦境に喘ぐ中、泥を掛けるやり方は、不誠実そのもの。
スカーレットヨハンソンとの一件を考えても、映画産業が滅んでも、ディズニーさえ生き残れば良いというヴィランそのものの思考を感じます。
もちろん配信により、映画館の無い地域やコロナ禍で足を運べない人にも平等に届けられるという意義は否定しませんが。
映画館の大きいスクリーンで観てこその映画を作り続けているのは、まさしくディズニーなので。
結局、割りを食うのは観客です、ディズニー問題は看過できませんね。