劇場公開日 2021年7月8日

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「尻尾の先まで詰まった『〜ムーンレイカー』オマージュと盛大な自虐ギャグと痛烈な社会風刺で出来たMeTooスパイアクションコメディ大作」ブラック・ウィドウ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0尻尾の先まで詰まった『〜ムーンレイカー』オマージュと盛大な自虐ギャグと痛烈な社会風刺で出来たMeTooスパイアクションコメディ大作

2021年7月21日
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鑑賞方法:映画館

舞台は1995年、オハイオ州に暮らすナターシャは妹エレーナ、父アレクセイ、母メリーナと暮らす平凡な少女。ごく普通の生活が夕食時に帰宅した父の一言で一変、家族は今までの生活を手放してキューバへ逃亡。ナターシャの家族はS.H.I.E.L.D.の施設から機密資料を奪取するロシアが米国に送り込んだ偽装家族のスリーパーで、任務完了後ナターシャとエレーナはスパイとして次々と過酷な任務を負わされる。時は流れて2016年、ソコヴィア協定に違反したことから逃亡者となったナターシャは潜伏先のノルウェーでかつての妹エレーナから送り付けられた不審な荷物を受け取った矢先で謎の人物に命を狙われる。間一髪のところで逃げ切ったナターシャはエレーナに接触するためにブダペストに向かうが、そこにも危険が迫っていた。

『〜シビル・ウォー』と『〜インフィニティ・ウォー』にブラック・ウィドウことナターシャが何をやっていたかを描いた作品ですが、これがビックリするくらいスパイ映画。とりわけ『007 ムーンレイカー』へのオマージュが夥しく、それに倣って本作はほぼスパイアクションコメディとなっています。ということで本作におけるジョーズに相当するキャラ、タスクマスターが素顔を晒すところで007ファンは大いに溜飲を下げることでしょう。だいたいメリーナを演じてるレイチェル・ワイズはダニエル・クレイグの奥さんですしイチイチシャレが効いています。コメディなので当然ギャグがてんこ盛りですが、とりわけエレーナがナターシャが『アイアンマン2』以降トレードマークにしている3点着地ポーズを延々ディスるところに大爆笑。しかしそんな軽快なノリの合間に少しずつ吐露されるのが極めて現代的なテーゼ、物語のオチまで『〜ムーンレイカー』オマージュを滲ませながら、世界中の女性が苛まれている悲劇を痛烈に皮肉った展開は実に辛辣で真面目なもの。敵ボスのドレイコフのルックスは某氏にクリソツで、マーベルやDCだけでなく映画製作の世界を席巻した大スキャンダルに堂々と中指を突き立てるMeToo大作です。

そもそもスクリーンで鑑賞すべきビッグバジェット作品なのに公開規模が限定的なのがとにかくもったいないという意味でワンガリ・マータイ案件でもある本作、ディズニーに追加料金払って自宅のショボいディスプレイで観るより遠出してでもスクリーンで観るべき作品です。ちなみに『〜シビル・ウォー』以降のアベンジャーズをこれから観ようとしている人には盛大なネタバレが含まれているのでオススメしません。

よね