「家族の絆が強くする」ブラック・ウィドウ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
家族の絆が強くする
『ゴジラvsコング』も待ったけど、こちらも待った~!
公開延期になる事、3度。
我が地方の事ながら、地元の映画館では上映せず。
何だか配給元の諸問題あったらしいが、上映しないなんて、バカバカバカ!
隣町の映画館まで行って、やっと観れた~!(ToT)
2年ぶりのMCU!
もうお馴染みのロゴマークと音楽だけで嬉しかった。
やっぱMCUは劇場で観ないとね。
待望だったけど、待望の理由にはもう一つ訳がある。
早い段階から彼女の単独主演作を望まれ…いや、待ちわびていた!
ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ。
言わずと知れたアベンジャーズ初期メンバーで、屈指の人気を誇る。
と同時に、メンバーの中で最も暗く、秘められた過去を持つ…。
これまでのシリーズの中でも断片的に挿入されてきたが、今回のメインストーリーは意外。
周知の通り、時系列は『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』~『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の間の出来事。
ソコヴィア協定を破り、逃亡中のナターシャ。元々スパイなので、身を隠す事は得意。そんな彼女の元へ届けられた謎の化学物質をきっかけに、ある大陰謀との闘いと、思いもよらぬ人物たちとの再会を果たす…。
しかしこれが巧みがもので、そのエピソードを軸に、彼女の過去も語られていく。
一粒で二度と美味しい!
これまではサポートなど“助演”的な立ち位置だったナターシャだが、今回は堂々たる“主演”。
ナターシャと、演じたスカーレット・ヨハンソンの魅力がぎっしり!
演技力もさることながら、ブラック・ウィドウと言ったらやはりアクション!
スーパーパワーは持っていない。鋼鉄スーツも着ないし、超人でも巨人でも神様でもない。
が、繰り出されるアクロバティックなアクション、リアルで生身のあるバトル、身体能力にいつもながら魅せられる!
クライマックス戦はキャップ出動でもいいくらい。実際、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のクライマックス戦のよう。(作品自体もスパイ・アクション×SFアクションで同作風)
アクション、カッコ良さ、美貌…。2時間強、ずっと彼女を見ていられるこの“し・あ・わ・せ”と“萌・え”♪
ナターシャはどちらかと言うとクール系。彼女一人だったらちとお堅い作品になっていたかもしれない。バランス取れた新顔が揃っていた。
エレーナ。
彼女もまた暗殺者であり、ナターシャと同等の力を持つ“妹”。
ナターシャとは複雑な仲。だって、再会いきなりバトル。2人の身体を張ったファイト・シーンは必見!
そして、ナターシャと同じ暗い過去…。
今回、全てはエレーナとの再会から始まった。
つまりは、ナターシャの物語であると共に、エレーナの物語でもある。
クールなナターシャに対し、ユーモアあるエレーナ。アベンジャーズやナターシャの着地ポーズを皮肉ったり。“姉妹”のやり取りも楽しい。
『ミッドサマー』『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』で脚光を浴び、遂にはMCU大作に抜擢されアクションを披露。フローレンス・ピューからますます目が離せない!
アレクセイ。
ナターシャとエレーナの“父”。
であると同時に、超人化されたスーパーソルジャー。またの名を“レッド・ガーディアン”。
キャップによって刑務所の中へ。ライバル心剥き出し。
いい加減な性格で、ホラ吹き野郎。80年代、キャップはまだ氷漬けだって!
体型もぽっちゃり、久々に着るスーツにも一苦労。オヤジ…と言うよりオッサン丸出しで、デヴィッド・ハーバーが笑わせる。
メリーナ。
ナターシャとエレーナの“母”。アレクセイの“妻”。
“夫”を支え、“娘たち”に愛情を注いだ“良妻賢母”。
序盤、悲劇に見舞われたかと思いきや…。
ある組織の重要人物であり、物語上でもキーを握る。
レイチェル・ワイズがさすがドラマ部分を締める。
今回初登場のナターシャの“家族”。
…しかし見て貰えばすぐ分かる事だが、本当の家族ではない。ある為に集められた“偽りの家族”。
ナターシャとエレーナは悲劇的な半生でもある。
幼い頃に本当の家族と引き離され…、ナターシャはやがてある人物から実母の消息を知らされる。
偽りとは言え、アレクセイやメリーナと“家族”として過ごした歳月。あの温もりや愛情も偽りだったのか…?
ナターシャもエレーナも暗殺者として育成される。
悲しみや孤独だけがいつも彼女から離れず。
彼女をそうさせたのは、“レッドルーム”と呼ばれるスパイ組織。その黒幕、ドレイコフ。
にしてもこのドレイコフ、女暗殺者たちを育成し、暗躍させ、世界を手中に…なんて大層な事を言ってるが、裏を返せば、
身寄りのない女の子たちを従わせ、ハーレムを造っているただの変態クソジジイ。“フェロモン・ロック”って…。
何故だか知らんけど、ハーヴェイ・ワインスタインを思い浮かべてしまった。男尊女卑も突く。
(レイ・ウィンストン、怪演)
今回対するは、この男とこの組織。
育成された女暗殺者たち=ウィドウズと相手の戦闘スタイルをコピーする謎の覆面暗殺者は強敵だが、ドレイコフは特別な力は持たない。
が、言わば自身の忌まわしい過去と向き合う。
レッドルームを去るきっかけとなった罪悪感に苛まれ続けた暗殺者時代の“仕事”…。
彼女にとって、ひょっとしたら最大の“強敵”かもしれない。
逞しいヒーローとは言え、一人では無理だ。
誰かの助けや支えが必要だ。
アベンジャーズは今散り散りだが、別の“家族”が居るではないか。
エレーナ、アレクセイ、メリーナ。
かつて、偽りとして暮らした“家族”。
しかし、その絆は決して偽りではなかったのだ。
家族の絆が強くする。
何故今回、『シビル・ウォー』~『インフィニティ・ウォー』という中途半端な間の出来事なのか、最初は“?”だったが、見て納得した。
家族を失ったナターシャ。
手に入れたと思った家族も偽りだった。
そんな彼女がやっと見つけた、アベンジャーズという家族。
その家族も決裂してしまった。
が、今回の闘いを通じて偽りの家族が修復した。
アベンジャーズだって、きっと…!
そして彼女は“家族”の再会の為に世界を駆け巡る。
宇宙からの最強巨悪の来襲をこの時はまだ知らなかった…。
だからエレーナ、お願いだから、復讐なんて止めて。
ナターシャが“家族”の為に自ら選んだ事なんだから…。
そう思って『アベンジャーズ/エンドゲーム』のあのシーンを改めて見ると、感極まってくる。
迫力と見せ場たっぷりのアクション、ユーモアに魅力的なキャラ、ドラマ…特に今回のテーマは“家族”。
大抜擢された小品の人間ドラマが多かった女流監督ケイト・ショートランドの演出も上々。
もう会えないと思っていたナターシャ=ブラック・ウィドウ。
そんな彼女にもう一度だけ、再会。MCUファンからすれば、サプライズ・ビッグプレゼント!
さよならなんて言葉じゃない。
ありがとう!
その言葉と共に、
さあ、MCUフェイズ4の幕開けだ!