「ブラック・ウィドウ」ブラック・ウィドウ chachaoさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラック・ウィドウ
しばらくぶりのMCU。
MCUで出てくるブラック・ウィドウはとても冷静でどこかミステリアス、セクシーでかっこいい女性というのがイメージです。
けれどこの映画出てくるのは、とても感情豊かで繊細で優しい、温かい「ナターシャ」という女性。他のMCU作品でも少し見え隠れしていた部分だけれど、それがより鮮明に表現されているように思いました。クールでカッコいいところもちゃんとありますが、どこかわたわたしている部分もあって、可愛いと思いました。
調達屋のお兄ちゃんとの何気ない駆け引き風のやりとりからさっと逃げる様子は、色々あってとても傷ついて臆病になっているようにも思えたし、妹とレッドガーディアンを救出するところでは「ちょっと!」と怒っていたり、
親近感がある「女子」ブラックウィドウはとても魅力的でした。
そして彼女の過去。MCUではちょいちょい出てきていますが、妹ナタリーがざっくりと説明し、空気読めない仮の両親の二人の存在で暗さは感じませんでした。けれどちゃんと重たい重たい過去が現実としてそこにある事を感じさせます。
あえてその部分をさらっとしたものにしたのはブラックウィドウを「ただ哀しい、可哀想な女性」として表現したくないという事かなと思いました。確かに過去は核として彼女の中に暗い影を落としていますが、その影の中にあって彼女がとった選択がどういうものだったのかを表現したかったのかなと思いました。
ウィドウ達が侵されている驚異的な洗脳技術。
豚で実験していましたが、とてつもなく恐ろしい技術です。呼吸するなと言われれば呼吸してないあの豚は印象的で
「私がそうだった」と震えるナタリーの虚な表情は一瞬のシーンなのに強烈でした。
まさにそれは世界のある地域で実際女性達が受けている現実を端的にかつショッキングな形で表現していると思います。
そして、この日本の女性の処遇待遇に目を向けると遠い国の話ではないことにも思い当たります。
この映画ではレッドルームやドレイコフが男性優位の世界や人物の象徴であり、要塞が崩れボコボコになるシーンは痛快でした。
ブラックウィドウはまさにヒーロー。
彼女は過去にズルズル引きずられる可哀想な女性ではないのだと思いました。
そしてこの映画は単なる女性蔑視野郎を倒すだけでは終わらないところがポイントです。
洗脳を解く事。女性自身が男性による男性主体の世界から目覚め、立ち上がり自分の意思で生きようというメッセージのように思いました。洗脳を解くあの薬を次に渡していくシーンもハッピーエンドではなく明るい未来への始まりを感じさせるものでした。
最初に出てきた時のブラックウィドウと比べると、作品を追うごとに魅力的になっています。
映画の中で成長し変わっていくキャラクター。
この作品を経てエンドゲームのあのシーンに繋がると思うと感慨深いです。