ミッドウェイ : 特集
【絶対に映画館で見たい】今までの戦争映画とは違う!
日米の“運命の3日間”を完璧に再現した、会心の一作
「インデペンデンス・デイ」などで知られる巨匠ローランド・エメリッヒ監督の最新作「ミッドウェイ」が、9月11日に公開を迎える。太平洋戦争の転換点となった、“ミッドウェイ海戦”をテーマに描く会心の一作だ。
なぜ「会心の一作」と言い切れるのか? それは“ハリウッドの破壊王”の異名を持つエメリッヒ監督が、この戦いを完璧に再現してみせただけでなく、今までの戦争映画とは違う新たな要素をふんだんに盛り込んだからだ。そうした要素は、今、あなたが思い描く“本作への期待”を軽々と超える、得も言われぬ体験を味わわせてくれる。
もちろん戦闘描写の迫力とスケールは、破壊王の面目躍如……自宅のテレビやPCなどで見るなんて、あまりにもったいない!
本特集では、「ミッドウェイ」が持つ他とは異なる特徴と、そのリアルかつ壮大な戦争映画体験に言及していこう。
今までの戦争映画とは違う…その理由は?
「ミッドウェイ」が持つ3つの特徴
①ミッドウェイ海戦=超高度な情報戦 という描写
まずは、作品の舞台についておさらいしよう。日本とアメリカの間で繰り広げられた太平洋戦争(1941~45年)における最大級の総力戦、それがこのミッドウェイ海戦だ。
42年、北太平洋のハワイ諸島北西のミッドウェイ島。日米双方の巨大な航空母艦、戦艦、戦闘機、急降下爆撃機、潜水艦が出動し、空中、海上、海中、その全てが戦場となった。ここでの戦果は、日米のその後の運命をわけたとされている。
アメリカ側から見たミッドウェイ海戦とは、日本軍の強襲により大打撃を受けたパールハーバー(真珠湾)、その屈辱を晴らす戦い。ゆえに同国では人気の題材で、幾度となく映像化されている。チャールトン・ヘストン、三船敏郎らが共演した「ミッドウェイ(1976)」は、当時の実際の記録映像を交え物語を紡いだ。
対して本作が特徴的なのは、この戦いが“超高度な情報戦”だったことにスポットを当てている点だ。米情報将校エドウィン・レイトン(パトリック・ウィルソン)らのオフィスでの静謐だが力強い活躍が、太平洋上での命がけの戦いと対置され、「暗号の解読が命運をわけた」と印象的に語られる。
目の肥えた戦争映画ファンでも、本作ならではの視点にハッとさせられることも多いだろう。
②とことん史実に忠実 「すべて時系列通りに描いた」
史実に忠実な戦争映画は数あるが、本作の再現度も半端ではない。エメリッヒ監督が20年に及ぶリサーチを重ね、さらに新たに発見された日本軍側の貴重な資料をもとに、ミッドウェイ海戦を完璧に再現してみせた。
特に、実際の時系列通りに展開する点が素晴らしい。開戦前のABCD包囲網、そしてパールハーバーでの強襲、日本本土への空襲(ドゥーリトル空襲)。そしてミッドウェイでは、戦闘の推移が分刻みで追いかけられており、「そこで何が起きていたか」が物語の力に乗せ極めてわかりやすく伝えられる。だからこそ、本作には娯楽以上の“得られるもの”があるのだ。
脚本を手掛けたウェス・トゥックは、こう語っている。「映画の中の戦争にまつわる出来事はすべて事実で、時系列通りに描いている。1941年12月の真珠湾から始まって、6月のミッドウェイ海戦で終わる。戦争の歴史において最もドラマティックな半年間だ」。
③日本が悪として描かれていない 両軍に捧げた敬意
先述の通り、アメリカにとって、ミッドウェイ海戦は日本へのリベンジマッチだった。したがって本作では、日本人=悪あるいは侵略者と描く選択肢もあっただろうが、エメリッヒ監督はそうしていない。日米双方に、国を愛し、大切な誰かのために戦う男たちがいた……そんな敬意が捧げられている。
物語を生きるのは、実在の人物たち。米太平洋艦隊司令長官のチェスター・ニミッツ(ウッディ・ハレルソン)、天才パイロットのディック・ベスト(エド・スクレイン)、日本空襲を指揮したジミー・ドゥーリトル(アーロン・エッカート)。日本連合艦隊司令長官・山本五十六(豊川悦司)、航空艦隊司令官・山口多聞(浅野忠信)、同・南雲忠一(國村隼)……。
また、洋画に登場する“日本人”は、往々にして妙な日本語を操るものだ。しかし本作では、日本人のほぼ全員がまったく違和感のない日本語をしゃべっており、その点も好印象だった。
エメリッヒ監督は、「多くの命が失われる戦争には勝者は無く、敗者しかいない。だからこそ、二度と起きてはならない戦争を描いたこの映画を、日米の軍人たちに捧げる内容にしたかった」と述べている。物語の幕が引き、エンドロールに入る直前に映し出される“ある言葉”を、あなたはどんな心境で見つめるだろうか。
もちろん戦闘描写もすごい! “破壊王”の面目躍如
陸海空、縦横無尽! リアルかつ壮大な映像を食らう
■舞う零戦、轟沈する空母 製作費120億円、超高品質で映像化
破壊王・エメリッヒ監督の作品なだけに、筆者はもともと「すごい戦闘描写が見られるのだろう」と期待していた。しかしいざ鑑賞してみると、「製作に120億円を費やした」との看板に偽りなし、素晴らしいスケールとディティールで再現された“太平洋戦争の戦闘”を見ることができた。
陸上、空中、海上、そして海中と、目まぐるしくステージを変えて戦闘が展開する。当時世界最強と謳われた零戦が空を縦横無尽に舞い、空母エンタープライズを轟沈せしめんと銃爆撃の雨を降らせていく。
対するアメリカ軍も艦上機隊が出撃し、空中では苛烈なドッグファイトが展開(「インデペンデンス・デイ」を彷彿させる!)。さらに海中では、潜水艦が日本軍の空母赤城に向け魚雷を放ち、これに座乗する南雲忠一は回避行動を絶叫する……。
特に印象深いのは、“急降下爆撃”のシーンだ。米軍のエースパイロット、ディック・ベスト(エド・スクレイン)が駆る爆撃機ドーントレスが、日本軍の戦艦に対し垂直に急降下、墜落寸前で爆弾を落とし去っていく。
ただ緊迫感や疾走感があるだけではない。「高度1500、1400、1300……」とすさまじい勢いで死が近づく一方で、艦上から放たれる対空砲火の弾幕が花火のように見え、幻想的なまでの映像美を演出している。
■ぜひ映画館で見てほしい、R・エメリッヒの“会心の一作”
本当に「どうやって映像化したんだ?」と驚くようなショットばかり。戦闘機のドッグファイトシーンなどは、パイロット視点で映し出されるため、まさに自分がコクピット内にいるかのような臨場感を味わえる。ぜひとも、大スクリーンで目撃してもらいたい。
さらに機関銃の発砲音、爆雷の炸裂音、空を覆い尽くす戦闘機隊のエンジン音、爆発炎上しゆっくりと沈む空母の断末魔……。スピーカーから飛び出る爆音が肌をビリビリ刺激し、鼓膜だけでなく脳髄をも揺らす。こうした感覚は、やはり“おうち映画”では絶対に体感できない。
迫力の映像と音響により、本作が持つ“体験”は、それはもうすさまじいものになる。そこへ、日米の実力派キャストたちが体現する、祖国のために命をかける男たちのドラマが絡み合い、私たち観客の胸に強く迫るのだ。
本作は、今までの戦争映画とは違う新たな要素をふんだんに盛り込んでいる。そうした要素は、今、あなたが思い描く“本作への期待”を軽々と超える、得も言われぬ体験を味わわせてくれる。
ぜひ映画館で見てほしい、会心の一作。日米の運命をわけた死闘へ、いざ、身を投じよう。