「山本五十六への敬意は感じたが、日本軍の敗因は南雲中将の無能だけなのか?」ミッドウェイ Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
山本五十六への敬意は感じたが、日本軍の敗因は南雲中将の無能だけなのか?
ローランド・エメリッヒ監督(GODZILLA ゴジラ等)による2019年製作の米国映画(中国2企業から資金提供あり)。
原題Midway、配給キノフィルムズ。
日本にいたことも有り山本五十六と交流も有ったパトリック・ウィルソン演じる米情報将校エドウィン・レイトン(映画では出てないが留学により日本語も話せたらしい)の功績に、大きな光が当てられているのには好感を覚えた。
レイトン配下の変人ジョセフ・ロシュフォート(ブレナン・ブラウン)暗号研究の成果として、ミッドウエイの作戦が筒抜けになっていたのは、あまりに痛い。戦闘の功績以上に、こういった情報戦での貢献に重きを置く米国の価値観に敬意を覚える。そして何故、日本軍は待ち伏せをされたのに、ミッドウエイ以降も暗号解読されていることに、長期間気が付けなかったのか?疑問を持つ或いは仮説設定するという科学的思考の欠如を、日本リーダー層は今だに引きずっている気もして、考えこまされてしまった。
米機SBDドーントレスが日本空母に急降下爆撃する際、艦上から放たれる対空砲火の数のあまりの多さには圧倒された。いくら何でも多すぎるのではと思ったのだが、実際にああなのだろうか?その砲火をくぐり抜け砲弾を放つ攻撃は、迫力を感じてとても良かった。一方あんな中で、急降下して攻撃するなんて、まともな神経ではとてもできないとも思った。エドスクレインが演ずる1日空母2隻を撃沈した英雄リチャード・ハルシー・ベストは、狂気のヒトだったのだろうか?
最近のCG技術の進歩は凄まじいが、残念なことに、本映画内では迎撃で迎え撃つゼロ戦(実際は96式艦上戦闘機だと思うのだが)も含めて米日の飛行機に模型感があり、その点は相当に期待はずれ。
日本軍人にもかなり敬意を持って描かれていてその点は良かったが、山口多聞少将(浅野忠信)と加来止男艦長(ノブヤ・シマモト)が船と一緒に最後を迎える姿には、史実通りも、あらためて日本軍の非合理性を感じてしまった。個人的には、美化されるが死ぬのは簡単で安易。無駄死にせず、次の闘いで死力を尽くすべき。日本軍は、勝利を真摯に追求し、長期的観点から死力を尽くしては戦っていないと思ってしまうのだ。
また山本五十六(豊川悦司)は映画の中で、南雲忠一(國村隼)が真珠湾の燃料タンクを破壊しなかったことに不満を抱いていた。その評価していない南雲を何故ミッドウエイの作戦で指揮官に置いたのかが大きな謎。この映画では南雲は無能、山本は高い能力有する描写となっていたが、実際はそうでもなかったのか?疑問が残ったかたち。
最後のエンディングで歌われる『All Or Nothing At All(1939発売1943年再リリースしたフランク・.シナトラによる大ヒット曲』(映画での歌い手はAnnie Trousseau)は、時代の空気感も醸し出して、とても良かった。
脚本ウェス・トゥック、撮影ロビー・バウムガルトナー、美術カーク・M・ペトルッセリ
編集アダム・ウルフ、音楽トーマス・ワンカー、ハラルド・クローサー、視覚効果監修
ピーター・G・トラバース。
出演はエド・スクレイン、ウッディ・ハレルソン、デニス・クエイド、マンディ・ムーア、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、ノブヤ・シマモト等。